
自社サイトと二つのモールの画面を順番に開き、注文を数え直しても、出荷漏れが1件もないと言い切れないまま夕方になります。
追いつかない原因は、注文の件数そのものではありません。注文がどの段で止まっているかを、1か所で数えられないことです。ここでは、平日45件ほどを二人で回す架空の店舗を例に、注文を六つの状態に分け、四つの例外だけを止める受注処理表を作ります。確認と締めの時刻、自動化を広げる順番、処理漏れが分かったときの戻し方まで並べます。
- 追いつかない原因は、注文の件数ではなく、注文が止まる場所が決まっていないことです。
- 注文の状態は、注文受付、入金・与信、在庫引当、出荷指示、発送連絡、完了の六つに固定します。
- 住所不備、備考、欠品、支払い未確定の四つだけを例外として止め、通常注文と混ぜません。
- 1日の確認は9時30分と13時、締めは出荷の15時30分と1日の17時に置きます。
- 自動化は通常注文の1段から始め、例外を止める条件を先に入れてから範囲を広げます。
追いつかないのは件数ではなく、注文が止まる場所が決まっていないから
受注処理が追いつかない売り場で先に効くのは、作業を速くすることよりも、注文が止まる場所を数えられるようにすることです。1日の終わりに、どの段に何件あるかを即答できる状態になれば、残業で巻き返す回数が減ります。
画面を何度も開き直してしまうのは、注文の情報が三つの場所に分かれているからです。自社サイトの管理画面、モールAの管理画面、モールBの管理画面は、それぞれ別の並び順で注文を見せます。どれも正しいのに、三つを足した数が合っているかは分かりません。
そこで作るのが、注文を1行ずつ並べた受注処理表です。表には、注文がいまどの段にいるかを表す状態と、止めている理由の区分を置きます。注文の全情報を写す場所ではなく、次の一手を決めるための表になります。
この記事で使う売り場は合成例です。自社サイトと二つのモールで販売し、平日は45件、繁忙日は90件ほどの注文を二人で処理する設定で、件数も時刻も説明のために置いた値であり、実在の店舗の記録ではありません。
受注処理は、注文を受けてから発送の連絡までの事務作業
受注処理とは、お客様の注文を受け取ってから、代金の確認、商品の取り置き、出荷の手配、発送の連絡までを終わらせる事務作業のことです。商品を箱に詰める作業そのものではなく、箱詰めを始めてよい状態かどうかを決める作業が中心になります。途中の1段で手が止まると、後ろの作業も止まったままです。
学校の文化祭で、模擬店の予約票をさばく場面に置き換えると追いやすくなります。予約票を受け取り、代金を集めたか確かめ、材料が足りるか見て、作る人へ渡し、受け取り時間を伝える。この五つの動きが、そのまま受注処理の中身です。
用語を三つだけ先に短く説明します。在庫引当は、その注文のために在庫を取り置くことです。与信は、後払いで代金を受け取れるかどうかの審査を指します。モールは、たくさんの店が出店している大きな通販サイトで、自社サイトとは注文情報の見え方が違います。
この記事で扱う範囲は、注文受付から出荷完了、つまり発送の連絡を終えた時点までに絞ります。商品が届いたあとの確認、商品の仕入れ、原価の計算、決算の処理は入れません。返品や交換が起きたあとの手続きも、売り場ごとの決まりに左右されるため、ここでは扱いません。
最初にやるのは、1日の注文を1枚の表に集めて数えること
改善の1歩目は、システムの検討ではありません。1日分の注文を1枚の表に集め、チャネルごとの件数を数えることです。チャネルとは、注文が入ってくる売り場のことで、合成例では自社サイトとモールAとモールBの三つになります。1枚にまとめるのは、同じ注文が二つの場所で別々に管理される状態を避けるためです。
合成例の平日45件は、自社サイト15件、モールA20件、モールB10件に分かれます。三つを足すと45件です。この内訳を書き出すだけで、どの売り場の注文が増えたときに手が止まるのかが見えてきます。
数えるときは、チャネルの画面に出る件数を正にしません。受注処理表の行数を正にします。画面側の件数と表の行数が合わないときは、取り込めていない注文が残っている合図です。
繁忙日の90件も、同じ表に同じ列で並べます。別の表を作ると、合計が合わなくなった原因を探せません。件数が倍になっても、変えるのは確認の回数だけに留めます。
状態を六つに固定すると、途中の注文を数えられる
状態は六つだけにします。注文受付、入金・与信、在庫引当、出荷指示、発送連絡、完了の六つです。状態名は、いま終わらせる作業を指し、完了だけが全部終わったことを意味します。
六つに固定する理由は、途中の注文を数えられるようにするためです。確認中や対応中のような言葉を混ぜると、何をすれば次へ進むのかが人によって変わります。六つなら、どの段で止まっているかが1語で伝わります。
合成例では、注文をこの順番で動かし、前の段が終わったことを確かめてから次へ進める形です。前払いの注文を入金の確認より先に出荷指示へ回すと、代金を受け取らないまま商品が出ていきます。ただし、入金・与信をどこで終わりとするかは、支払方法ごとに決める部分です。後払いや代金引換を使う場合は、それぞれの完了の条件を自店で決めてください。
戻る向きの動きも先に決めます。発送連絡まで終わった注文で住所の誤りが分かっても、受注処理表の元の行は書き換えません。完了という状態は、発送の連絡まで受注処理が終わった事実だけを表すためです。配送事故や住所の訂正は、受注処理表とは別に記録を作り、配送会社やモールが案内する手順に沿って進める形です。

例外は四つに分け、止める段をあらかじめ決めておく
通常注文と例外を同じ流れに混ぜると、45件すべてが遅れます。例外は四つに限り、それぞれ止める段を先に決めます。住所不備、備考、欠品、支払い未確定の四つです。
例外とは、人が確かめないと次へ進められない注文のことです。判定は好みではなく、見れば分かる条件にします。条件が人によって変わると、引き継いだ相手が同じ判断をできません。
住所不備だけ、見つける段と止める段が違います。受付で印を付けたあと、在庫引当までは進めておき、出荷指示の直前で止めます。先に在庫を取り置かないと、住所の返事が届いたときに欠品へ変わることがあるためです。
備考は、書かれていること自体を例外にします。中身を読む前に通常注文へ流すと、見落とすのはお届け日の指定や同梱の希望です。備考欄に1文字でも入力があれば止める、という決め方が迷いを減らします。
例外の件数は、合成例として平日45件のうち7件に置いています。内訳は住所不備2件、備考3件、欠品1件、支払い未確定1件で、調査で得た割合ではありません。残りの38件が通常注文です。
区分を五つ以上に増やしたくなっても、まずは四つで足りるかを見てください。区分が増えるほど判定に迷い、止まる注文が増えます。四つに収まらない理由が続いたときだけ、増やすかどうかを考えます。

受注処理表の記入済み例と、別の店で使えるひな形
受注処理表の列は七つです。注文の全情報を写すのではなく、次の一手を決めるために必要な列だけを置きます。
- 受付番号:自店で付ける当日の通し番号です。合成例では001から045までを使います。
- チャネル:自社サイト、モールA、モールBのどれか1つ。
- 状態:六つのうち、いま終わらせる作業の名前を1つだけ書きます。
- 例外区分:なし、住所不備、備考、欠品、支払い未確定の五つから1つを選びます。空欄は作りません。
- 止めている理由と次の一手:何が足りず、次に何をするかを書きます。
- 担当:次の一手を実行する人を1人だけ書き、完了した行は空けます。
- 期限:次の段へ動かす日時。完了した行は空けます。
注文日時と支払方法は、この表に写しません。チャネルの注文データ側に残しておき、必要なときだけ受付番号で引きます。列が増えるほど書き写す時間が増え、更新そのものが止まります。
次は、合成例の平日1日分を記入した表です。例外に落ちた7件と、通常注文の代表1件を並べています。
残りの37件は、例外区分がなく当日中に完了した通常注文です。同じ動きの繰り返しになるため、代表として受付番号004の1行だけを載せ、ほかは省いています。省いた37件も、状態の列は完了で、担当と期限の欄は空いています。
列ごとの書き方は、次の2件を見本にしてください。通常注文と、住所不備で止めた注文の2通りです。
記入済みの見本1:通常注文
受付番号:004
チャネル:自社サイト
状態:完了
例外区分:なし
止めている理由と次の一手:15時30分までに出荷指示を出し、16時30分に発送連絡まで終了
担当:空欄
期限:空欄
記入済みの見本2:住所不備で止めた注文
受付番号:009
チャネル:モールA
状態:出荷指示
例外区分:住所不備
止めている理由と次の一手:自店の入力ルールでは部屋番号が必要な住所形式で、部屋番号の欄が空。モールのメッセージで確認を送信済み。返信が届いたら住所を直して出荷指示
担当:受注担当
期限:翌営業日13時
次は、別の店で使えるひな形です。角かっこの中だけを入れ替えます。
受付番号:【当日の通し番号】
チャネル:【自社サイト/モール名】
状態:【注文受付/入金・与信/在庫引当/出荷指示/発送連絡/完了】
例外区分:【なし/住所不備/備考/欠品/支払い未確定】
止めている理由と次の一手:【何が足りないか】。【だれに何を確かめたか】。【返事が届いたら何をするか】
担当:【次の一手を実行する人】
期限:【次の段へ動かす日時】
差し替えるのは、角かっこの中だけです。列の数と並び順は変えません。チャネルが四つ以上ある売り場では、チャネル欄の選択肢だけを足し、列は増やさずに使えます。
このひな形が合うのは、注文を自店で受け、出荷の指示も自店で出している場合です。出荷を外部の倉庫へ任せている場合は、出荷指示の段を、倉庫へ渡した時点と倉庫が受け取った時点に分ける必要が出てきます。状態の定義を相手と合わせてから、ひな形の状態欄を書き換えてください。
1日の流れは、確認2回と締め2回で組み立てる
受注処理を回すのに要るのは、長い作業時間ではなく、決まった時刻です。合成例では、確認を2回、締めを2回置きます。注文を見るたびに手を止めなくなるのが、時刻を決める利点です。
- 9時30分:前日13時から当日9時30分までの注文を三つのチャネルから取り込み、例外区分を付けます。
- 13時:9時30分以降に入った注文を同じ手順で処理し、午前に止めた例外の返事を確かめます。
- 15時30分:当日出荷の締めです。ここまでに出荷指示を出した分だけ、その日に出します。
- 16時30分:伝票番号が確定した行の発送連絡を送り、状態を完了に変えます。
- 17時:1日の締めです。状態別の件数を数え、持越す行の担当と期限を書き換えます。
繁忙日の90件は、確認を3回に増やします。足すのは11時の1回だけで、締めの時刻は動かしません。締めを遅らせると、出荷も発送連絡も後ろへずれていきます。
17時に数えるのは、状態別の件数です。合成例の平日は、完了41件、出荷指示2件、在庫引当1件、入金・与信1件、注文受付0件、発送連絡0件になります。足すと45件で、取り込んだ件数と同じです。
完了41件の内訳は、通常注文38件と、備考で止めたあと当日中に戻った3件です。持越すのは、住所不備2件、欠品1件、支払い未確定1件の4件になります。繁忙日の90件なら、例外は14件、通常注文は76件という置き方になります。
引き継ぎは、口で伝えずに表で渡します。持越す4行の担当列を翌日動かす人へ書き換え、期限列に日時を入れておけば、翌朝は表の上から順に見るだけで再開できます。
状態と例外の条件は、担当が交代しても同じ判定になるように手順書へ写します。読み返される手順書の作り方は、伝わる手順書の作り方でまとめています。

自動化は通常注文の1段から始め、例外を止める条件を先に入れる
自動化で最初に入れるのは、速くする仕組みではなく、止める条件です。例外を止められないまま通常注文の処理を自動にすると、住所が足りない注文も出荷指示まで進みます。順番を変えるだけで、戻す手間が減ります。
広げる順番は、次の四つです。
- 三つのチャネルの注文を、1枚の受注処理表へ自動で集めます。この段では状態を動かしません。
- 四つの例外区分の判定を自動で付け、なし以外の行を自動処理の対象から外します。
- 通常注文だけは、入金・与信から出荷指示までの状態移動を自動にできます。
- 伝票番号が入った行の発送連絡を自動で送り、状態を完了に変えます。
試す範囲は、小さく区切るのが安全です。合成例では、最初の3日間を自社サイトの通常注文だけに限り、1日15件までを対象にします。モールの注文は、この3日間は手作業のままにします。
確認のやり方は、突き合わせです。自動で付いた例外区分と、人が同じ条件で判定した結果を1日分並べ、違う行の数を数えます。違いが0件の日が3日続いたら、モールAへ範囲を広げます。
止め方と戻し方を決めるのも、範囲を広げる前です。違いが1件でも出た日は、その日の自動処理を止め、手作業に戻します。止めるときは、自動処理の対象から外す条件を全件に切り替え、人の確認へ回す形にします。
ここで並べた四つの段は、特定の受注管理システムの機能名ではありません。扱える範囲は製品ごとに違うため、自店の六つの状態と四つの例外をそのまま設定できるかどうかを、確認の観点にしてください。3日間、15件、0件が3日続くといった区切りも合成例で、自店の件数と人数に合わせて決める値です。
処理漏れや誤出荷が分かったら、対象を止めて事実と影響範囲を書く
気づいた直後にやるのは、原因の追究ではありません。対象の注文を止めることと、分かっている事実を書き残すことです。原因を探すのは、止めたあとでも間に合います。
止める対象は二つあります。1つは、その注文の行です。もう1つは同じ条件で処理された行で、自動化を広げた直後であれば、その条件の自動処理も止めます。
記録するのは、次の六つです。
- 分かった日時と、分かった人
- 対象の受付番号とチャネル
- 何が起きたか(出荷漏れ、別の商品の出荷、別の住所への出荷などの区別)
- 影響範囲(同じ原因で起きた可能性のある行の数え方と、その件数)
- そのとき止めたこと(自動処理の停止、同じ便の出荷の保留など)
- まだ分かっていないこと
影響範囲は、数え方まで書きます。合成例で出荷漏れが1件見つかった場合に見るのは、その日に同じ条件で処理した通常注文38件です。38行の状態と伝票番号の有無を1行ずつ照合すれば、ほかに漏れがあるかを確かめられます。
お客様への連絡、返品、再出荷、返金の進め方は、ここでは決めません。自店のルールと、配送会社やモール、決済サービスとの取り決めに従ってください。事実を記録したうえで、決まりに沿って動く順番になります。
記録を消さないことも決めておきます。誤った出荷指示の行を上書きすると、何件に影響したのかを後から数えられません。訂正は、元の行を残したまま別の行に書きます。
回り始めたかを確かめる六つの見方
回り始めたかどうかは、気持ちではなく表で判定します。次の六つが当日の表でそろっていれば、1日分として使える状態です。
- その日に取り込んだ45件すべてに行があり、チャネル別の内訳が15件、20件、10件で合っています。
- どの行にも、六つの状態のどれか1つだけが入っていて、空欄も六つ以外の言葉もありません。
- 例外区分がなし以外の行には、止めている理由と次の一手、担当、期限の三つがそろっています。
- 17時に数えた状態別件数の合計が、取り込んだ件数と同じです。合成例では41件、2件、1件、1件、0件、0件で45件になります。
- 持越す行の担当列が、翌日動かす人へ書き換わっています。
- 15時30分の締めより後に出荷指示を出した注文が、当日出荷の分に混ざっていません。
六つがそろって得られるのは、注文が遅れないという保証ではありません。どの段に何件あり、だれがいつ動かすかを即答できる状態です。遅れが出たときに、どこで止まっているかを探し回らずに済みます。
手が止まったときの戻し方
途中で止まる場所は、だいたい決まっています。詰まりごとに、起きていることと戻し方を並べます。
止まったときに戻る場所は、いつも受注処理表です。表のどの列が空いているかを見て、その列だけを埋めます。1日分をやり直す必要はありません。
最初の一歩は、今日の注文を1枚に集めるところから
受注処理が回るかどうかは、件数ではなく、注文が止まる場所を数えられるかで決まります。六つの状態と四つの例外区分が入った表が1枚あれば、どの段に何件あるかを即答できます。追いつかない感覚が薄れるのは、止まる場所が見えたときです。
今日やるなら、今日の注文を1枚の表に集め、チャネル別の件数を数えるところまでで足ります。合成例のチャネルは三つですが、二つだけの売り場もあります。数え終わったら、各行に六つの状態のどれかを入れてください。
自動化やシステムの検討は、そのあとで構いません。まず1日分の表を埋め、17時に状態別の件数を数えてみてください。空いている列が、次に決めることの一覧になります。
Q&A
Q1. 受注管理システムを入れれば、この受注処理表はいらなくなりますか。
表そのものはシステムの画面に置き換わりますが、七つの列の中身は先に決めておく必要があります。とくに状態の名前、例外区分、止める段を決めずに導入すると、設定の段で同じ迷いが出ます。製品ごとに扱える範囲が違うため、六つの状態と四つの例外をそのまま設定できるかを、選ぶときの確認の観点にしてください。
Q2. 例外区分を五つ以上に増やしたくなったときは、何を見て決めればよいですか。
増やす前に、止めている理由の列をまとめて読み返してください。四つのどれにも当てはまらない理由が繰り返し出ているかどうかが判断の材料になります。何件以上を目安にするかは注文数で変わるため、固定の基準は置きません。1か月分を読み返して決めるという進め方が、迷いを増やさずに済みます。
Q3. 二人のうち一人が休んだ日は、どう回せばよいですか。
まず、お客様へ公開している発送の約束と、倉庫や配送会社の締め時刻、販売チャネルに表示している発送予定を確かめてください。その約束を守れる範囲がどこまでかが、その日の判断の土台になります。範囲の中で、受け付ける量や二人分の作業の分け方を調整し、例外の判定だけは普段どおり行って止める行を作っておきます。締めの時刻や発送予定そのものを動かす場合は、確かめた約束と締め時刻に収まることを先に確認してください。

