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「税理士事務所の補助が属人化」を変える、回す補助業務の整え方

約19分
「税理士事務所の補助が属人化」を変える、回す補助業務の整え方

担当している人が休んだ日に、その顧問先の資料がどこまで届いているのか、前回なぜその処理にしたのか、次に何をすればいいのかが誰にも分からず、月次の作業がそこで止まってしまうことがあります。

手順書を作っても、この止まり方はなかなか消えません。詰まるのは決まった手順ではなく、顧問先ごとの例外と、税理士の判断を待っている場所だからです。ここでは補助業務を一本の流れとして並べ直し、共通工程・顧問先別の例外・税理士判断の三層に分けたうえで、定例業務を一つだけ選んで整える順番まで書きました。

  • 属人化とは、最新の状況、顧問先ごとの例外、判断の理由、次の一手が一人の記憶や個人のファイルにしかなく、他の人が続きを引き取れない状態です。
  • 補助業務は、どの顧問先でも同じ共通工程、顧問先ごとの例外と常時の指示、税理士へ上げる判断の三層に分けると、標準化してよい場所が見えます。
  • 手順書だけでは止まります。安定した手順、顧問先メモ、進捗記録を別々に持ち、顧問先番号や案件番号でつなぎます。
  • 進捗は締切だけでなく、いまどの段階か、何が足りないか、誰の返事待ちか、レビューは済んだか、次は誰が何をするかまで見せます。
  • まず定例業務を一つ選び、現在の段階・完了条件・例外の合図・レビュー担当・次の行動を書き出すところから始めます。
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税理士事務所の補助業務は、資料が届いてから完了を記録するまでの流れ

税理士事務所の補助業務とは、税理士が担う仕事を、事務の面から支える作業のまとまりです。呼び方は事務所ごとに違い、税理士補助、アシスタント、担当職員などが使われます。範囲も一律ではありません。記帳の入力だけを受け持つ事務所もあれば、顧問先とのやり取りや決算の準備まで任される事務所もあります。

それでも月次の作業を分解すると、多くの事務所で似た並びになります。

  1. 顧問先から資料を受け取る(紙、クラウド、メール添付)
  2. 足りない資料がないかを確認する
  3. 会計ソフトへ入力する、またはデータを取り込む
  4. 通帳や請求書と突き合わせて残高を照合する
  5. 分からない点を質問としてまとめる
  6. 顧問先へ確認し、返ってきた回答を記録する
  7. 月次の資料を作る、決算や申告の準備を進める
  8. 税理士やレビュー担当の確認を受ける
  9. 完了を記録して、次の月へ引き継ぐ

この並びを一度書き出しておくと、あとの話が扱いやすくなります。属人化しているのは業務の全部ではなく、たいてい特定の工程だからです。入力なら誰でもできるのに、質問の整理と回答の記録だけが一人に寄っている。そういう形はよく見かけます。

気をつけたいのは、この九つがどの事務所にも当てはまるわけではない点。同じ「月次」という言葉でも、中身は事務所と契約によって変わります。まずはご自身の事務所の実際の流れに置き換えてから、この先を読み進めてください。

資料受領から不足確認、入力、照合、質問と回答、レビュー、完了記録までが一本につながり、完了記録から翌月へ引き継がれる補助業務の全体像

 

属人化は、次の一手がその人の中だけにある状態

属人化とは、その業務の最新の状況、顧問先ごとの例外、過去の判断とその理由、そして次にやること。この四つが一人の記憶か個人のファイルにしかなく、他の人が続きを引き取れない状態を指します。「その人が詳しい」だけなら、まだ属人化ではありません。詳しい人が不在になった瞬間に作業が止まるなら、属人化です。

起きる理由は、担当者の抱え込みではありません。補助業務は例外がとても多い仕事です。顧問先ごとに資料の届き方が違い、締切も違い、使う科目の細かい約束も違います。その違いは手順書に書ききれる量を超えるので、覚えている人の中へ沈んでいきます。

やり取りの置き場所も効いてきます。顧問先からの返事が担当者個人のメールに入り、電話で聞いた内容は手元のメモに書かれ、結論だけが会計ソフトへ反映される。あとから見た人には、なぜこの処理なのかが分かりません。処理は残っても、理由は残らないからです。

もう一つ見落とされやすいのが、次の行動です。作業の記録があっても、いまボールを持っているのが自分なのか、顧問先なのか、税理士なのかが書かれていないと、代わりに入った人は動けません。止まっているのか進んでいるのかすら判断できないわけです。

補助業務は、共通工程・顧問先別・税理士判断の三層で分ける

標準化がうまくいかない事務所ほど、全部を一つの手順へ押し込もうとしています。まずは業務を、次の三層に分けて眺めてみてください。

  • 共通工程:どの顧問先でも同じ順番で進む部分。資料の受領確認、入力、照合、質問の整理、レビュー依頼、完了記録など
  • 顧問先別の例外と常時の指示:資料の届き方、締切、科目の使い分け、連絡してよい相手と手段、過去に取り決めた扱い
  • 税理士の判断が要る分岐:会計処理や税務の取り扱いを決める場面、顧問先へ結論を伝える場面

分ける理由は、手の入れ方が層ごとに違うからです。共通工程は標準化できます。顧問先別は標準化するものではなく、見える場所へ書き出しておくもの。税理士判断は、そもそも補助者が決める領域ではありません。

ここで一つ、現場で効く見方を挙げます。属人化は共通工程にはあまり残りません。共通工程は誰がやっても同じなので、手順書があれば渡せるからです。残るのは例外のレーンです。「この顧問先だけ請求書が翌月に届く」「この科目は以前の取り決めで分けている」といった話が、記録されないまま人の中に溜まっていきます。

そこで例外は、内容を細かく書くより先に二つだけ決めます。どうなったら例外だと気づけるか(合図)と、気づいたらどこへ持っていくか(上げ先)。この二つが書いてあれば、詳しい経緯を知らない人でも次の一手を選べます。

共通工程は標準化する、顧問先別は書き出す、税理士判断は上げる、という三層の分け方を上下に並べた図

 

補助者が進める作業と、税理士へ上げる判断の境界

三層のうち、いちばん慎重に扱いたいのが税理士判断の層です。ここを曖昧にしたまま効率化を進めると、事務所全体のリスクになります。

税務代理、税務書類の作成、税務相談は、税理士でなければ行えない仕事とされています。一方で、事務所の職員が補助として行う、特別の判断を要しない機械的な事務の扱いについては、国税庁が公表する税理士法基本通達の第2条《税理士業務》関係で考え方が示されています。どこまでが機械的な事務にあたるかは作業の中身や進め方で変わるため、条文の言葉だけを頼りに自分で線を引くのは避けたほうが安全です。

実務として決めておきたいのは三点あります。補助者が自分の判断として税務上の結論を顧問先へ伝えないこと。判断が要る場面に出会ったら、そこで作業を止めて税理士へ上げること。上げ先と上げ方を、あらかじめ事務所として決めておくこと。

具体的な線引きは事務所によって変わります。担当する税理士の責任のもとで、どの場面をエスカレーション(判断を上位の担当者へ引き渡すこと)の対象にするかを決め、書き出しておくと迷いが減ります。判断に迷う場面が新しく出てきたときは、その場で線を引き直さず、いったん上げてから事務所の決めごとを更新する。この順番だと、線引きが人によってずれません。

マニュアルを作っても属人化が残る理由

手順書を整えたのに引き継ぎで苦労した、という話は珍しくありません。理由は二つあります。

一つ目は、三層を一冊にまとめてしまうこと。手順書の中に顧問先ごとの例外が混ざり、その中へ先月の進捗メモまで書き足されていくと、どこが今も生きている情報なのか分からなくなります。更新も止まります。全体を直さないと一行が直せないからです。

置き場所は、変わる速さで分けます。

  • 手順書:共通工程のやり方。担当が変わっても内容は変わらない
  • 顧問先メモ:例外と常時の指示。顧問先の事情が変われば書き換える
  • 進捗記録:いま動いている案件の状態。毎日変わる

分けたうえで、顧問先番号や案件番号のような共通の番号でつなぎます。進捗記録から顧問先メモへ、顧問先メモから手順書へ、番号一つでたどれる状態です。ツールは何でも構いません。表計算ソフトのシートを三枚に分け、いちばん左の列へ同じ番号を置くだけでも成立します。

二つ目の理由は、手順書に完了条件が書かれていないこと。「入力する」「照合する」と作業名が並んでいても、どうなったらその工程が終わりなのかが書かれていない。これでは、受け取った人は自分の作業が終わったのかどうか判断できません。

引き継げる業務かどうかを見分ける目安は、手順書の有無ではありません。完了条件と次の行動が、他人に見える形で書かれているかどうかです。手順がきれいに文書化されていても、この二つが人の頭の中にあるなら、その業務はまだ渡せない状態にあります。

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一つの定例業務から整える手順

全部を一度に整えるのは無理があります。毎月必ず発生して、いま特定の人へ寄っている業務を一つだけ選んでください。たとえば月次の記帳から試算表を出すまで、といった区切りが選びやすいです。

  1. 整える業務を一つ選ぶ(毎月起きる、担当が偏っている)
  2. 始まりと終わりを決める(何が届いたら始まりで、何を出したら終わりか)
  3. 入口と出口を書く(受け取るもの、渡すもの、それぞれの置き場所)
  4. 完了条件を言葉にする(作業名ではなく、外から確認できる状態で書く)
  5. 例外が出やすい場所に印を付け、上げ先を書く
  6. 短い手順書にする(画面の細かい操作は別紙へ回す)
  7. 自己確認とレビューを分けて、それぞれの担当を決める
  8. 別の職員に一度、そのとおりやってもらう
  9. 詰まった場所だけを直す

八番目は飛ばさないでください。書いた本人は、書かれていない前提を無意識に補って読みます。別の人が同じ手順で動いてみて、はじめて抜けている一行が見つかります。

手順書をゼロから起こすのが重いなら、公表されている公式の資料を出発点にする手もあります。日本税理士会連合会は、事務所全体の業務水準を高める目的で業務チェックリスト(法人税用)などを公表しています。ただし、そのまま自分の事務所へ当てはまるとは限りません。確認したい項目の並べ方や粒度を参考にしながら、自事務所の流れに合わせて選び直す使い方になります。

業務を一つ選ぶ、流れを描く、完了条件を決める、例外に印を付ける、レビューを分ける、試して直すという六つの進め方

 

進捗は、締切より「どこで止まっているか」を見せる

進捗管理と聞くと締切の一覧を思い浮かべますが、締切だけの表では属人化は解けません。締切は「いつまでに終わらせるか」を示すだけで、「いま何が起きているか」を教えてくれないからです。

記録するのは、この五つ

  • 現在の段階:受領、入力、照合、質問中、レビュー待ち、完了のどこにいるか
  • 足りないもの:どの資料が何枚、いつ依頼したか
  • 誰の返事待ちか:顧問先、税理士、社内の別担当
  • レビューの状態:未依頼、依頼済み、指摘対応中、確認済み
  • 次の行動:次に誰が何をするか

この五つがそろうと、担当者が不在でも状況が読めます。「照合まで済み、請求書が一枚足りず、三日前に顧問先へ依頼済み、返事待ち」と書いてあれば、代わりに入った人は催促するだけで前へ進められます。

締切の日数やレビューの回数は、ここでは決めません。顧問先との契約、申告期限、事務所の体制で変わるものですから、一律の数字を持ち込むと、かえって守られない表になります。

繁忙期は、守る欄をさらに絞る

記録の項目を増やすほど、忙しい時期に真っ先に更新が止まります。理想の記録簿を作った事務所ほど、申告の山場で空欄が並ぶ、という結末になりやすいです。

そこで、繁忙期に何があっても埋める欄をあらかじめ決めておきます。現在の段階、止まっている理由、次の行動。この三つが残っていれば、あとから他の人が作業を再開できます。細かい経過や所要時間の記録は、繁忙期には落として構いません。

更新のタイミングも決めておくと続きます。作業を中断するとき、誰かへ渡すとき、返事を待つとき。この三つの瞬間だけ書き換えると決めておけば、記入のための時間を別に取らずに済みます。

月次業務を追ってみる:資料受領からレビューまで(架空の例)

ここからは説明のための架空の例です。日付や資料の内容はこの例のために置いた設定で、どの事務所にも当てはまる標準ではありません。

  1. 顧問先からクラウドの共有フォルダへ資料が届く。通帳の写し、請求書、領収書の三種類
  2. 受領の確認をすると、前の月に取引のあった一社の請求書が見当たらない。進捗記録の状態を「資料待ち/請求書1枚/顧問先へ依頼済み/顧問先の返事待ち」にする
  3. 届いている分の入力を進める。資料待ちの一件は止まっている理由が書かれているので、放置にはならない
  4. 照合の途中で、新しく始まった支出の会計処理に迷う。状態を「判断待ち/処理方法/担当税理士へ」として、資料待ちとは別の行に分ける
  5. 請求書が届き、税理士から処理の方針が返る。入力と照合を終える
  6. 自分でひととおり見直したあと、レビューを依頼する
  7. 指摘に対応し、確認済みになったら完了を記録する。処理の判断とその理由、翌月への申し送りも同じ場所へ書く

この例で押さえたいのは、二番と四番を別の行に分けている点です。片方は顧問先の返事待ち、もう片方は税理士の判断待ちで、待っている相手が違います。まとめて「保留」にしてしまうと、どちらか一方が解けたときに気づけません。

もう一つは、最後に書いた判断の理由です。結論だけを会計ソフトへ残すと、翌月また同じところで手が止まります。一行でも理由が添えてあれば、次に担当した人はそこから続けられます。

よくあるつまずきと、小さく始める順番

整え始めた事務所がつまずきやすい場所を並べます。

  • 全顧問先を一度に標準化しようとする:例外の量に押し戻されて、途中で止まります
  • 手順書を作り込みすぎる:画面の操作まで書くと、ソフトが更新されるたびに古くなります
  • 進捗表の欄を増やしすぎる:繁忙期に更新されず、誰も見ない表になります
  • 例外を手順書へ書き足す:共通工程が読みにくくなります。例外は顧問先メモへ移します
  • 自己確認とレビューが混ざる:どちらが何を見るか決まっていないと、両方が薄くなります
  • 引き継ぎのときだけ資料を作る:退職や異動が決まってから書くと、思い出せた範囲しか残りません

順番としては、いちばん困っている一つの業務、その中でも例外が出やすい一工程から手を付けるのが現実的です。全体像を描く作業は、あとからでも間に合います。

最初に作るものは、手順書ではなく進捗記録で構いません。いま担当している案件について、段階と止まっている理由と次の行動を書き出してみる。それだけで、どの工程に例外が集まっているかが見えてきます。

まとめ:一つの業務で、五つの欄を書き出す

補助業務の属人化は、能力の問題ではなく置き場所の問題です。最新の状況、例外、判断の理由、次の一手。この四つが人の中にしかない限り、手順書をどれだけ厚くしても引き継げません。

今日から動かすなら、これだけで足ります。毎月必ず発生する顧問先の業務を一つ選び、その業務について、いまどの段階か、何をもって完了とするか、どうなったら例外だと気づくか、レビューは誰がするか、次に誰が何をするか。この五つを書き出してみてください。

書けない欄が出てきたら、そこが属人化の残っている場所です。全部を整える必要はありません。書けなかった欄を一つ埋めるだけでも、翌月の月次は少し軽くなります。

Q&A

Q1. 属人化を減らしたいのですが、何から始めればいいですか?

手順書づくりより先に、進捗記録からです。いま担当している案件を一つ選び、現在の段階、止まっている理由、次に誰が何をするかの三つだけ書き出してみてください。書けない欄が出た工程が、最初に整える場所になります。

Q2. 顧問先ごとにやり方が違うのですが、どこまで共通化できますか?

共通化するのは工程の順番と完了条件までで、中身までそろえる必要はありません。資料の届き方、締切、科目の使い分けといった顧問先ごとの事情は、共通化せずに顧問先メモへ書き出します。共通の手順書と顧問先メモを、顧問先番号でつないでおくと迷いません。

Q3. 税理士のレビューが必要な場面は、どう決めればいいですか?

事務所の側で先に決めておく事項です。担当する税理士の責任のもとで、会計処理や税務の取り扱いを決める場面、顧問先へ結論を伝える場面などを対象として書き出しておきます。新しく迷う場面が出たときは、その場で自分で線を引かず、いったん税理士へ上げてから決めごとを更新してください。

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