
食料品の消費税が1%になるという話を聞いて、レジや会計の設定をいつ触ればよいのか決めきれない場面があります。
食料品1%は、2026年9月15日に閣議決定された大綱で示された改正案です。法案が国会審議を経て可決・成立した場合の内容で、いま決まっている税率ではありません。それでも、成立してから慌てずに動くために、案の段階で作れるものがあります。変更する対象と根拠と担当と状態を1枚に並べた、税率変更の準備表です。架空の食品販売事業者を例に、その1枚の作り方から通しテストと戻し方までを並べます。
- 食料品1%は2026年9月15日の大綱で示された改正案。成立した場合は2027年4月1日から2029年3月31日まで
- 成立前に触るのは本番設定ではなく、変更対象ごとに根拠と状態を持つ準備表1枚
- 商品と契約は飲食料品・新聞定期購読・その他・要確認の4区分へ仮分類し、根拠のURLと確認日を行ごとに記録
- 通しテストは合成データ3件で、合計が同じでも税率別の内訳は60円ずれるため、締めは内訳で照合
- 不成立・内容変更・延期のときは切替予約を解除し、準備表の状態を保留へ戻す手順まで先に承認
食料品1%は改正案の段階、いま作れるのは準備表1枚
食料品の消費税を1%にするという内容は、2026年9月15日に閣議決定された大綱で示された改正案です。大綱とは、税制改正の方針をまとめた文書のことです。法案が国会審議を経て可決・成立した場合に適用される案で、いま適用されている税率ではありません。だから、本番のレジや会計の税率を書き換える段階には、まだ入っていません。
成立した場合の内容は、国税庁と財務省の消費税率引下げ特設サイトで確認できます。切り替え前後の取引や価格表示の特例は、国税庁のリーフレット飲食料品に係る2年間の消費税率引下げについてにあります。対象期間は、成立した場合に2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間という案です。税率は、飲食料品が1%、新聞の定期購読が8%、その他が10%という案です。
案の段階でも、準備は進められます。税率の設定が入っている場所は、レジだけではありません。ネット通販、商品マスタ(商品名と価格の台帳)、請求と販売管理、会計、価格表示、帳票、返品と値引きにも入っています。成立の知らせが届いてから全部を一度に直すと、日数が足りなくなりやすくなります。先に作るのは設定ではなく、変更する対象を並べた1枚です。
判断の軸に置きたいのは、税率を覚えることではなく、1行ごとに根拠と状態が書かれているかどうかだと考えています。税率を覚えても、ある商品が1%に当たるかどうかは、商品名だけでは決まりません。行ごとに根拠と状態があれば、法案の内容が変わった日に、どの行から見直すかが決まります。
準備表は8列。変更対象ごとに根拠と状態を持たせる
準備表は1枚の表で、1行が1つの変更対象です。商品や契約の行と、レジや会計などのシステム・帳票の行を、同じ8列で並べます。列の意味を先に固定しておくと、途中で書き方が分かれません。
- 変更対象:商品名、契約名、またはシステム・帳票の名前を1つだけ入れる欄
- 候補税率・変更内容:成立した場合に適用される見込みの税率、またはシステム側で変える設定
- 根拠:確認した一次情報(発表した官庁が出している元の資料)の名称とURL、確認した日付
- 担当:確認、変更、テストを担う人の役割名を1つ
- 状態:未着手、要確認、確認済、テスト済、承認済、保留の6つから1つ
- テスト結果:合成データで通した日付と、期待した結果との一致・不一致
- 保留条件:この行を保留へ戻す条件を1文で
- 戻し方:保留になったとき、何をどこまで戻すか
状態の進み方も決めておきます。未着手から要確認、確認済、テスト済、承認済へ一方向に進み、保留は確認済より後のどの状態からでも移せる扱いにします。保留から戻る先は2つだけです。根拠に問題があれば要確認へ、テストの不一致が問題なら確認済へ戻します。
1枚に集める理由は、探す場所を増やさないためです。商品の分類は販売管理担当の手元、レジの設定は店舗責任者の記憶、会計での税率の分け方は経理担当のメモという状態です。そうなると、成立の知らせが届いた日に、まず情報を集める作業から始まります。同じ表の同じ列に入っていれば、状態の欄を上から見るだけで残りが分かります。
商品と契約を4つの区分へ仮に分けて、根拠を1行ずつ残す
最初の作業は、扱っている商品と契約を4つの区分へ仮に分けることです。飲食料品として1%候補、新聞の定期購読として8%候補、その他として10%候補、そして根拠が決まらない要確認の4つです。仮分類と呼ぶのは、成立前だからというだけではありません。区分そのものを一次情報で確かめる必要があるからです。
ここから先の商品名、金額、テスト結果は、説明のために作った架空の例で、実在の会社や取引ではありません。ただし、表の根拠の欄にある2026年9月29日(火)は、この記事で国税庁の資料を確認した実際の日付です。店頭販売とネット通販の両方があり、飲料の定期配達契約も持つ食品販売事業者を想定しています。
この抜粋では、テスト結果、保留条件、戻し方の3列を省いています。4行ともテストへ進む前で、その3列が空欄のままだからです。根拠の欄も、表に収めるために名称と確認日だけを載せています。実際の準備表には、確認したページのURLもそのまま貼ります。
新聞の定期購読を要確認にしたのは、8%という候補税率ではなく、対象になる新聞の条件を確かめられていないからです。どの定期購読が8%案に当たるかは、購読しているという事実だけでは決まりません。飲料定期配達契約を要確認にした理由は別です。定期供給契約や通信販売については、経過的な取扱い(切り替えの前後をまたぐ取引の扱い)が示されています。契約書の期間と引き渡しの時期を並べて、契約単位で確認します。
同じ商品でも、売り方が違うなら行を分けてください。店頭で持ち帰る販売と、店内で飲んでもらう販売を1行にまとめると、あとで片方だけを直せません。商品名だけでは候補税率が決まらない行は、素直に要確認へ置きます。
全商品を一括で1%にする設定は、仮分類の段階では作らないでください。一括で入れると、日用品や新聞の行まで1%に染まり、根拠の欄に書けるものがなくなります。一括で入れた表を見つけたら、行ごとに要確認へ戻し、根拠が書ける行から確認済へ進めます。

変更箇所を8か所に棚卸しし、担当を1行に1人だけ置く
商品と契約の行がそろったら、次はシステムと帳票の行です。税率の設定は1か所ではなく、値札から締めの帳票まで散らばっています。架空の事業者の例では、8か所を棚卸しして、それぞれに担当の役割名を1つ割り当てています。
- レジ:商品ごとの税率区分と、レシートの税率別内訳の表示/店舗責任者
- ネット通販:商品ページの表示価格と、注文確認メールの内訳/通販担当
- 商品マスタ:商品ごとの税率区分と本体価格(消費税を含まない価格)/販売管理担当
- 請求・販売管理:請求書の税率別の区分と合計、定期供給契約の請求/販売管理担当
- 会計:売上と仕入の税区分(売上や仕入を税率ごとに分ける区分)、税率別の集計/経理担当
- 価格表示:値札、店内のポップ、チラシの税込価格/店舗責任者
- 帳票:レシート、納品書、請求書、日次と月次の売上帳票/経理担当
- 返品・値引き:返品で戻す税率、値引きの当て方と按分(金額を税率ごとに割り振ること)/販売管理担当
担当を役割名で1つに絞る理由は、テスト結果を誰の欄に書くか決まるからです。「関係者で確認」と書くと、不一致が出たときに直す人が決まりません。1行1担当にしておけば、要確認のまま止まっている行を見て、誰へ声をかけるかがすぐ分かります。
価格表示と帳票を、対象から落とさないでください。国税庁のリーフレットは、経過的な取扱いと、総額表示(税込価格を示す表示のしかた)の特例にも触れています。値札とチラシをいつ差し替えるかは、期限が近づいてから調べると間に合いません。どの表示が特例の範囲に入るかも、先に確かめておく部分です。

合成データ3件で、税率別の内訳まで通しテストを回す
行が埋まったら、複製環境か合成データでの通しテストへ進みます。本番の設定ではなく、複製した環境に候補税率を仮に入れて動かします。見るのは6項目です。
- 商品ごとの税率区分が、準備表の候補税率と同じか
- 税込価格が、本体価格から計算し直されているか
- レシートと請求書に、税率別の内訳が出ているか
- 会計の仕訳が、税率ごとに分かれて起きているか
- 返品が、社内で決めた扱いと同じ税率で戻っているか
- 日次締めの税率別の内訳が、レジと会計で一致しているか
合成データには、1日分の会計3件を使います。1件目は、ミネラルウォーター2本(本体100円が2本)とキッチンラップ1個(本体300円)を一度に買った会計です。1%対象の本体が200円で消費税2円、10%対象が300円で消費税30円、合計は532円になる想定です。2件目では、同じ水2本のうち1本分に100円の値引きを当て、ラップ1個を足します。1%対象の本体が100円で消費税1円、10%対象の本体が300円で消費税30円、合計は431円です。
3件目は、新聞の定期購読1か月分で、本体2,000円、消費税160円、合計2,160円とします。3件を締めたときの期待値は、本体の合計2,900円、消費税223円、合計3,123円です。税率別に分けると、1%対象が本体300円と消費税3円、8%対象が本体2,000円と消費税160円です。10%対象は、本体600円と消費税60円になります。この期待値を、テストを動かす前に紙へ書き出しておきます。
期待値を先に書く理由は、画面に出た数字を正解として読んでしまうのを避けるためです。動かしてから合計だけを見ると、内訳の取り違えは残ったままになります。
この合成データに、飲料定期配達契約は入れていません。候補税率が要確認のままで、期待する結果を先に書けないからです。要確認の行は、テストデータではなく契約単位の確認へ回します。
返品で戻す税率、値引きの按分方法、端数処理(1円未満の扱い)の設定は、記事の側では決められません。自社で使っている設定を書き出し、社内で決めた扱いと合っているかを確かめてください。判断に迷う取引は税理士などへ照会し、照会先と照会した日付を根拠の欄に書き足します。
合計が同じでも内訳がずれる行は、保留にして本番反映を止める
テスト結果は、一致か不一致かだけでなく、どこがどれだけ違ったかまで書きます。架空の事業者で数字が分かれたのは、2件目の値引きです。
レジは100円の値引きを買い物全体へ按分し、1%対象の本体を160円、10%対象を240円として計算しています。販売管理と会計は、値引きをミネラルウォーター1本へ当てて、1%対象を100円、10%対象を300円としています。差は、1%対象で60円、10%対象で60円です。
やりにくいのは、日次締めの合計が同じになることです。レジ側の税率別の内訳は1%対象が360円、10%対象が540円で、本体の合計は期待値と同じ2,900円になります。合計だけを見て締めると、この60円の取り違えは残ります。消費税額の合計も、期待値の223円になりません。
だから、締めの照合は合計ではなく税率別の内訳で行います。合計が合っていても、内訳が合っていないことは起こります。準備表のテスト結果の欄には、一致した項目だけでなく、この60円の差と気づいた場所も書き残してください。
この抜粋では、候補税率・変更内容、根拠、担当の3列を省いています。商品と契約の抜粋と同じ書き方で、同じ行に入っているからです。省いた列を別の意味で使い回さないでください。
承認は、状態の欄を自動で進める作業ではありません。人が例外と根拠を見てから、承認済へ進めます。見るのは、要確認の行が残っていないか、テスト結果の不一致が直っているか、根拠の欄に確認日が入っているかの3点です。1つでも欠けていれば、承認済へ進めずに保留のまま置きます。

準備が終わったと言える状態は、5つで確かめる
準備の完了は、作業量ではなく5つの状態で判定してください。どれも、準備表を見れば確かめられる形にしておきます。
- 棚卸しした8か所のすべてに、担当の役割名が1つずつ入っていること
- 商品と契約の行に、候補税率、根拠のURL、確認日、担当、状態が入っていること
- 通常の販売、返品、値引き、日次締めの合成テストの結果が、日付付きで残っていること
- 本番へ切り替える条件、保留にする条件、戻し方が承認されていること
- 成立前の本番環境で税率設定を変更していないことを、切替担当と経理担当の2人で確認できていること
5つのうち欠けたものがあれば、直す場所が決まります。1つ目が欠けるなら棚卸しの行、2つ目なら商品と契約の行、3つ目ならテストの記録です。4つ目が欠けるなら承認の場、5つ目なら本番環境の設定そのものです。
切替の条件は、日付だけで書かないでください。「2027年4月1日に切り替える」だけだと、成立していない場合や施行日が動いた場合に止める根拠がありません。「法案の成立と施行日を国税庁の特設サイトで確認できたら」という条件を先に置き、確認した日付と確認者を残します。
うまくいかないときの、5つの戻し方
外れ方は5つに分かれます。戻る先も、それぞれ違う場所です。
- 全商品を一括で1%にしたとき:行の状態を要確認へ戻し、根拠が書ける行から確認済へ進め直す。日用品と新聞の行に、根拠の欄が空のまま残っていないかを1行ずつ見る
- レジだけ変えて会計や請求と合わなくなったとき:本番反映の予約を解除し、複製環境の通しテストへ戻る。値引きの当て方と端数処理をレジ・販売管理・会計で1つにそろえてから、税率別の内訳で再照合
- 定期供給契約や通信販売の経過的な取扱いを見落としたとき:契約単位の確認へ戻る。契約書の期間と引き渡しの時期を並べて確かめ、準備表では契約ごとに1行を立て直す
- 法案が成立しない、内容が変わる、施行が延びたとき:切替の予約をすべて解除し、本番は現行の設定のまま維持。準備表の状態は保留へ戻し、変わった箇所だけを要確認へ落とす
- 一次情報の更新を確認できないとき:設定変更と切替を止め、確認できた日付と確認者が入るまでは準備表の状態を動かさずに置く
5つに共通するのは、戻す先が本番の設定ではないことです。本番を直しながら考えると、間違いに気づいた時点で売上と請求がもう動いています。戻す先を準備表の状態と複製環境に置いておけば、やり直しは1行分で済みます。
今日つくるのは、準備表の1行目
食料品1%は、2026年9月15日に閣議決定された大綱で示された改正案です。成立した場合は、2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間という案です。飲食料品が1%、新聞の定期購読が8%、その他が10%という案も、同じリーフレットで示されています。成立前にできるのは、本番設定の変更ではなく、1行ごとに根拠と状態を持つ準備表を作ることです。
今日できるのは、いちばん売れている商品を1つ選び、準備表の1行目に書くところまでです。変更対象、候補税率、根拠のURLと確認日、担当、状態の5つを埋めれば、1行が形になります。
次に、その1行と同じ形で、日用品と新聞の定期購読と定期配達契約の行を足します。要確認が3行並んでも、困りません。要確認が見えている表のほうが、成立の知らせが届いた日に動きやすくなります。
本番の設定に触るのは、法案の成立と施行日を国税庁の特設サイトで確認してからです。ある商品や契約が1%の対象に当たるかどうかは、最新の一次情報と、迷う場合は税理士などへの確認で決めてください。準備表の根拠の欄に確認日と確認者が並んでいれば、内容が変わった日に見直す場所がすぐ分かります。
Q&A
Q1. 複製環境を用意できません。営業時間外なら、本番のレジで試してもよいですか。
本番の税率設定は触らないでください。営業時間外でも、設定を変えた時間に返品や締めの処理が走ると、候補税率のままの記録が残ります。複製環境がない場合は、期待値を紙に書くところまでを自分で進め、検証用の環境や試算のしかたをレジと会計の提供元へ問い合わせてください。回答が届いたら、その内容と回答日を準備表の根拠の欄に書き、テスト結果の欄は空のままにしておきます。
Q2. 1%の対象かどうか自分で判断できない商品は、準備表にどう書けばよいですか。
候補税率の欄を空にせず、そこへ要確認と書き入れてください。空欄だと、まだ見ていない行と、見たうえで決められなかった行の区別が付きません。根拠の欄には、照会した相手と照会した日付を残します。状態は要確認のままなので、この行は合成データにも入れず、承認済へも進めません。判断が届いたら候補税率を書き直し、確認済へ1段だけ進めます。
Q3. 担当を役割名で書くと、人が変わったときに表を全部直すことになりませんか。
表の本体は直さずに済みます。準備表の担当は役割名のままにして、役割と今の担当者名の対応を1行だけ別に置いてください。担当者が代わったら、その1行を書き替えるだけで全行に反映されます。反対に、担当を個人名で書くと、代わるたびに行の数だけ書き替えが出ます。役割名を1つに絞れない箇所が見つかったときは、変更対象の分け方が粗いので、行を2つに分けます。


