目次(14項目)
外注先へ『商品一覧を見やすくしておいてください』と送ったあと、どこまで伝わったのか分からず落ち着かないことがあります。質問が返ってくると、自分の説明が足りなかったのだと感じやすくなります。ただ、つまずきの元は言葉づかいだとは限りません。決めていない条件が依頼文に残っていると、書き方を整えるだけでは、条件の確定と認識の一致までは進みません。
ここでは、商品一覧を整える外注を説明用の題材に、依頼文1通を10項目で書き出し、相手の質問2点を反映して合意版へ直すまでを追います。発注前に、成果物と検収(納品物が合意した条件を満たしているかを確かめる作業)の条件をそろえる範囲に絞ります。
- 依頼文に置くのは、目的から未確定事項までの10項目
- 「見やすく」は、形式・項目・件数・照合元・表示の条件へ分解
- 決まっていない項目は空欄にせず、理由と決まる予定日を書き添える
- 相手の質問への回答は依頼文の欄へ書き直し、無返信は承諾として数えない扱い
- 発注前に合意する5つの条件と、法定の明示事項は別に確かめる
伝わる指示は、依頼文1通の10項目から整える
指示が伝わらない原因のうち、この記事で扱うのは、決めていない条件が依頼文に残っている場合です。外注先へ送る1通へ、目的から未確定事項までの10項目を書き出してください。
言い方を変えても、納品物の形式や検収の基準が決まっていなければ、相手は決まっていない箇所を質問することになります。やり取りが増えること自体は問題ではありません。どの条件が空いているのかを双方が指し示せない状態が、負担になります。
依頼文に置く欄は、次の10項目に固定して進めます。業界共通の様式ではなく、発注前の条件相談を進めやすくするための整理です。
- 【目的】:その成果物を何に使うのか
- 【資料の版】:渡す資料の名前と版、承認済みかどうか
- 【納品物】:ファイル形式、点数、提出先
- 【対象範囲】:依頼に含む作業
- 【対象外】:今回は依頼しない作業
- 【納期】:納品の期日と時刻
- 【検査完了日】:発注側が検査を終える期日
- 【検収基準】:何と照らし、どうなっていれば合格か
- 【確認窓口】:質問の送り先と、条件をまとめる担当
- 【未確定事項】:まだ決まっていない項目と、決まる予定日
10項目は、発注前に合意する5つの条件へまとまります。成果物は【納品物】、対象範囲は【対象範囲】と【対象外】、納期は【納期】と【検査完了日】、検収基準は【検収基準】と照合元になる【資料の版】、確認窓口は【確認窓口】が受け持ちます。【目的】と【未確定事項】は、この5つを決めるための補助欄です。

依頼文を書く前にそろえる5つの材料と、3つの役割
依頼文を書く前にそろえるのは、利用目的、渡せる資料とその版、希望する納期、検査する人、費用を承認する人の5つです。この5つが欠けたまま書き始めると、空欄のままの項目が増えます。
依頼文のどの欄が書けないのかを見つけるため、次の順でそろえてください。
- 利用目的:成果物を誰に見せ、何に使うのか
- 渡せる資料とその版:相談に出せる段階の資料と、作業に使う確定した正本、それぞれの版の名前
- 希望する納期:いつまでに手元にあればよいのか、その理由
- 検査する人:納品物を照合し、合否を判断する担当
- 費用を承認する人:見積りと契約の条件を決める決裁者
すでに契約書や見積りがある場合は、依頼文を書く前に対象範囲を照らし合わせます。契約に含まれていない作業を依頼文へ書くと、見積りの前提と合わなくなります。食い違いが残る箇所は、費用を承認する人へ戻してください。
そろえた材料は、3つの役割に割り当てます。次の3つはこの記事で使う分け方で、1人が複数の役割を兼ねる運用もあります。誰が決めるのかを分けておくと、相手から質問が来たときの回し先に迷いません。
- 確認窓口(発注側の依頼担当):質問の受け付け、条件の取りまとめ、記録の保存
- 商品担当責任者:渡す資料の正本を確定し、納品物の合否を承認
- 費用・契約の承認者:見積りの金額と契約の条件を承認
決裁の権限がない条件は、窓口の担当者が自分で確定させず、未確定として残したまま相手へ伝えます。窓口と承認者を同じ人が兼ねる場合は、その権限の範囲で確定できます。承認する人が不在のときは、あらかじめ合意した代理の権限があるかどうかを確かめます。
任せる業務そのものが決まっていない場合は、依頼文を書く前の段階です。何をどこまで任せるかの切り出し方は、バックオフィス外注の進め方で扱っています。

「見やすく」を分解して、依頼文の初版をつくる
曖昧な言葉は、ファイル形式、載せる項目、対象の件数、照合元の資料、表示の条件へ分けてください。分解した条件を10項目へ写すと、依頼文の初版ができあがります。
ここからは、説明用の架空の依頼EX84-01を使います。商品の件数、資料の版、日付と時刻は説明のために置いた設定で、標準の納期でも実績でもありません。
EX84-01は、商品情報12件をもとに、取引先へ提示する商品一覧を整える依頼です。扱う項目は商品ID、商品名、税込価格、単位の4つで、商品IDにはP01からP12までを使います。作業に使う正本は社内の承認を経たものを渡す予定ですが、相談を始める時点ではP07の税込価格が決まっていません。窓口の担当者が最初に送ろうとしたのは、『商品一覧を見やすく、来週までに』という一文です。
この一文には、納品物、対象外、合否の判定条件が入っていません。次の表の形で分解すると、必須の条件と相談できる条件が分かれます。
| 曖昧な言葉 | 分解した条件 | 扱い |
|---|---|---|
| 見やすく(並び順) | 商品ID順にP01からP12までの12件 | 必須 |
| 見やすく(項目) | 左から商品ID、商品名、税込価格、単位の4欄 | 必須 |
| 見やすく(体裁) | A4横1ページに収め、文字切れをなくす | 必須 |
| 一覧(形式) | 取引先へ提示できるファイル。形式は未確定 | 相談 |
| 来週までに | 納品は11月6日15時、検査完了は11月9日15時 | 必須 |
| 元になる資料 | 相談段階の資料v1。P07の税込価格が空欄 | 相談 |
表で『相談』とした2行が、依頼文の【未確定事項】へ入る項目です。空欄のままにせず、決まっていない理由と決まる予定日を書き添えます。
既存の表の見本を添えるときは、何の参考として渡すのかを一緒に書いてください。EX84-01では、欄の順序と読みやすさの参考として渡し、作業の進め方や作業する時間を指定するものではないと添えています。
分解した条件を10項目へ写すと、次の形の依頼文になります。【】の欄の名前はそのまま使い、《》で囲んだ部分へ自分の条件を入れてください。
件名:《成果物の名前》の作成について、条件のご確認のお願い
【目的】《成果物の名前》を《見せる相手と場面》へ提示するために使います。
【資料の版】《資料の名前と版》を添付します。《承認済みか、相談段階かの状態》です。
【納品物】《ファイル形式と点数》。提出先は《提出先》です。
【対象範囲】《依頼に含む作業》
【対象外】《今回は依頼しない作業》
【納期】《納品の期日と時刻》
【検査完了日】《発注側が検査を終える期日と時刻》
【検収基準】《照合元の資料》と照らし、《判定できる条件》を満たしている状態
【確認窓口】《窓口の担当と連絡先》。条件の確定は《決裁する人》が行います。
【未確定事項】《決まっていない項目》。《決まらない理由》のため、《決まる予定日》までに確定します。
実現が難しい箇所、記載が足りない箇所、ご認識と違う箇所があれば、《回答の期日》までにお知らせください。
差し替えるのは《》で囲んだ部分だけです。【】の欄の名前は、そのまま残してください。【対象外】には、相手が気をまわして手を出しそうな作業を書きます。【検収基準】には、照合元の資料名と、数が合っているか、文字が切れていないかなど、相手が自分で確かめられる条件を書いてください。納品物の形式が決まっていない段階では、形式が決まってから追記する部分も残ります。
決まっていない項目は、空欄にも『追ってご連絡します』にもしません。【未確定事項】へ、決まらない理由と決まる予定日を書きます。予定日が分かれば、相手はその日までに何を進められるかを判断できます。
報酬の額と支払期日は、10項目に入れていません。金額と支払いの条件は見積りと契約で決める部分で、この依頼文が代わりになることはありません。法定の明示事項との関係は、後の節で分けて確かめます。
EX84-01の初版は、ひな形へ条件を写すと次の形になります。
件名:商品一覧(12件)の作成について、条件のご確認のお願い
【目的】取引先への提示用に、商品情報12件を1枚の一覧へまとめます。
【資料の版】相談段階の資料v1と、既存の表の見本1点を添付します。作業に使う正本v2は、社内で価格を確定したうえで改めてお渡しする予定です。見本は欄の順序と読みやすさの参考で、作業の進め方や作業する時間を指定するものではありません。
【納品物】取引先へ提示できる商品一覧。ファイル形式と点数は未確定のため、ご相談させてください。提出先は確認窓口へのメール添付です。
【対象範囲】商品ID P01からP12までの12件を商品ID順に並べ、左から商品ID、商品名、税込価格、単位の4欄を載せる作業
【対象外】商品写真の制作、紹介文の作成、価格の決定、取引先への送付
【納期】2026年11月6日15時
【検査完了日】2026年11月9日15時
【検収基準】お渡しする正本と照らし、12件のID、商品名、税込価格、単位が一致し、欠落と重複がない状態。提示用のファイルをA4横1ページに収める場合は、文字切れがないことも含みます。ファイル形式が決まった時点で、この欄は更新予定です。合否は商品担当責任者が判断します。
【確認窓口】発注側の依頼担当。費用と契約の条件は、費用・契約の承認者が決めます。
【未確定事項】①資料v1のP07の税込価格が空欄です。社内で価格を決めている途中のため、決まった価格を反映した正本v2を11月4日12時までにお渡しします。②納品のファイル形式が未確定です。ご提案を伺ったうえで、同じ11月4日12時までに決めます。
実現が難しい箇所、記載が足りない箇所、ご認識と違う箇所があれば、11月2日17時までにお知らせください。
初版の時点では、【資料の版】と【納品物】が確定していません。この2つを【未確定事項】へ書いたので、相手はどこを質問すればよいかを絞れます。形式に合わせて書き足す【検収基準】も、同じ2件が決まってから固まります。
件名の付け方やメールの組み立ては、条件が決まったあとの作業です。文面の整え方は、動いてもらえる依頼メールの型も参考になります。

受け手の質問2点で、足りない条件を合意版へ埋める
相手からの質問は、依頼文で欠けている条件を教えてくれる材料です。回答をやり取りの中に置いたままにせず、依頼文の該当する欄へ書き直して合意版にします。ここでいう合意版は、成果物と検収の条件について双方の認識をそろえた版です。費用と発注日を含む委託そのものの合意は、この次の段階になります。
EX84-01では、11月2日17時までに次の2点が返ってきます。
- 資料v1のP07の税込価格が空欄だが、どう扱えばよいか。空欄のまま載せるのか、受注側で調べるのか。
- 納品はPDFだけでよいか。編集できるファイルも必要か。
回答は、11月4日12時までに、相手に推測させない形で返してください。
- P07の税込価格は商品担当責任者が決め、12件すべてが埋まった承認済みの正本v2を、この回答と合わせてお渡しします。受注側で価格を調べる作業は対象外です。
- 納品物は、編集できるXLSX 1点とA4横1ページのPDF 1点の計2点が必要です。XLSXは表計算ソフトで開いて直せるファイル形式で、PDFだけでは足りません。
2点に答えると、依頼文の【資料の版】【納品物】【検収基準】【未確定事項】が変わります。残る【目的】【対象範囲】【対象外】【納期】【検査完了日】【確認窓口】は初版のままで、文書を作り直すことはしません。次の表に出すのは、この4つの欄で書き換わる部分だけです。表に出てこない記載は、初版のまま残る条件です。
| 項目 | 初版 | 合意版 |
|---|---|---|
| 【資料の版】 | 相談段階の資料v1。P07の税込価格が空欄 | 承認済みの正本v2。12件すべて記入済み |
| 【納品物】 | 商品一覧。ファイル形式と点数は未確定 | 編集できるXLSX 1点とA4横1ページのPDF 1点の計2点 |
| 【検収基準】 | お渡しする正本と照合。欠落と重複なし。形式が決まってから追記 | 照合元を正本v2に確定。12件の4項目一致と欠落・重複なしは初版のまま。PDFはA4横1ページで文字切れなし、XLSXは編集でき、PDFと同じ値を追加 |
| 【未確定事項】 | ①P07の税込価格 ②納品のファイル形式 | 2件とも解消。残るのは発注日と見積りの金額 |
XLSXが加わった分は、作業量に影響します。費用への影響は相手へ確かめ、見積りへ反映されるかを費用・契約の承認者が見ます。見積りの金額は依頼の内容や相手によって変わるため、ここでは置いていません。
合意版は、相手の返事を写しただけの文書ではありません。納期、対象範囲、納品物について、相手の認識を文章で返してもらい、こちらの記載と一致しているかを確かめます。言葉の違いが残る箇所は、どちらの表現を使うかまで決めておきます。
返事が来ないときは、合意できたと数えません。到達したかどうかと、いつ回答できるかを尋ねてください。既読や沈黙を承諾として扱うと、納品の時点になって食い違いが出てくることがあります。
仕様の認識がそろっても、発注が済んだ状態とは別です。EX84-01では、発注日と見積りの金額が残っています。費用・契約の承認者が見積りの内容を確かめて承認し、相手へ発注の意思を伝えます。
相手から受注の返事をもらった時点が、業務委託をすることについて合意した時点です。EX84-01では、合意した条件と合意日を、合意版の依頼文と発注の記録に同じ内容で残します。未合意のまま作業を始めてもらうことは避けてください。
発注前の合意と、法定の明示事項は分けて確かめる
発注前にそろえる5つの条件と、法律で明示が求められる事項は、別の確認です。依頼文の10項目を埋めても、法定の明示事項が満たされたことにはなりません。
フリーランス法(フリーランス・事業者間取引適正化等法)が関わるのは、相手が特定受託事業者に当たる場合です。公正取引委員会のQ&Aは、特定受託事業者を、従業員を使用しない個人か、一の代表者以外に他の役員がなく従業員も使用しない法人としています(2026年10月30日確認)。
同じQ&Aは、ここでいう従業員を使用するとは、労働基準法上の労働者を雇うことだと説明しています。対象は、1週間の所定労働時間が20時間以上で、かつ継続して31日以上雇用されることが見込まれる労働者です。短時間・短期間などの一時的に雇用される労働者は、これに含まれないとされています。相手が人を雇っているかどうかだけでなく、この条件に当たるかを確かめてください。
同じQ&Aには、契約の形式や名称ではなく働き方の実態で労働者に当たるかが判断されるとも書かれています(2026年10月30日確認)。その発注者との関係で受注者が労働基準法等の労働者と認められる場合、本法の特定受託事業者には該当しません。一方で、特定受託事業者に当たる相手が労働組合法の労働者と認められる場合もあるとされています。契約の名前だけで相手の立場を決めることは避けてください。
公正取引委員会のQ&Aが挙げる明示事項は、次の8つです(2026年10月30日確認)。
- 発注する側と受注する側、それぞれの名称
- 業務委託をした日
- 給付・役務の内容
- 給付・役務提供の期日
- 給付・役務提供の場所
- 報酬の額および支払期日
- 検査をする場合は、検査完了日
- 現金以外の方法で支払う場合は、支払方法に関すること
依頼文の10項目と重なるのは、給付・役務の内容、期日、場所、検査完了日の4つです。成果物を納めてもらう依頼なら、内容は何を納めるか、期日と場所は受け取る日と納品先です。サービスの提供を受ける依頼なら、何のサービスを、いつ、どこで受けるかに当たります。成果物の例であるEX84-01では、商品一覧2点の中身、11月6日15時、確認窓口へのメール添付が当たります。残る双方の名称、業務委託をした日、報酬の額および支払期日、支払方法は、依頼文ではなく見積りと契約、発注の記録で押さえる条件です。
業務委託をした日について、同じQ&Aは業務委託をすることについて合意した日を指すとしています(2026年10月30日確認)。合意は口頭でも構わないとされていますが、トラブル防止の観点から記録に残る方法が望まれるとも書かれています。作業に着手する日を別に定めることもありますが、業務委託をした日はあくまでも合意した日です。合意した日と着手する日が同じ日になる場合もあります。
公正取引委員会の2026年の特設サイトでは、口頭で取引条件を伝えただけでは明示方法として認められないと案内されています(2026年10月30日確認)。明示する方法は、書面か、電子メール、チャットツール、SMSなどの電磁的方法です。相手が明示は不要と了承していても、明示は必要とされています。
未定事項の扱いも、同じサイトに出ています(2026年10月30日確認)。明示事項のうち、内容を定められないことに正当な理由があるものは、その理由と決まる予定日を委託時に明示します。決まったら直ちに明示し、当初の明示と後の明示は相互の関連性が明らかになるようにしてください。
ここで分けておきたいのが、発注前の条件相談と、委託後の明示義務です。依頼文の【未確定事項】を書くことは実務の工夫で、法律上の当初の明示を済ませた扱いにはなりません。フリーランス法が適用される取引では、業務委託をした時点で明示事項を伝えます。社内の確認待ちを理由に、明示を後回しにすることもできません。発注前にそろえた条件は、この明示の内容へそのまま使えるので、2つを続けて確かめてください。
明示を行ったといえる程度に委託内容を明らかにしていた場合、取引の過程でより詳細な内容が確定しても、必ずしも改めて明示する必要はないとQ&Aは述べています(2026年10月30日確認)。ただし後に定めた詳細も相手へ伝え、委託内容の明確化に努めることが望まれるとされています。
やり取りは、依頼文の初版、質問と回答、合意版の順に残してください。どの条件がいつ決まったかをたどれる形にしておくと、納品後の照合が進みます。なお、フリーランス法の確認だけで法務の確認が終わるわけではありません。自社と相手の立場、適用される法令、個別の契約条件は、契約を担当する人や専門家へ確かめてください。
条件を伝えることと、相手の従業員へ指示することは別
相手が従業員を使用する会社で、その従業員が作業を担う場合、契約の当事者として条件を伝えることと、その従業員へ直接作業を指示することは分けます。依頼文に成果物の条件を細かく書くこと自体が、問題になるわけではありません。
厚生労働省の疑義応答集が分けているのは、契約の当事者間で行う注文と、請負労働者への直接の指揮命令です。発注者が請負事業主に対して作業工程の見直しなどの要求や注文を行うことは、当事者間で行われるもので、直接の指揮命令ではないと説明されています(2026年10月30日確認)。一方で、発注者が直接、請負労働者へ作業工程の変更を指示した場合は、直接の指揮命令に該当するとされています。
同じ資料が挙げているのは、仕事の順序や方法の指示、請負労働者の配置、一人ひとりへの仕事の割付です。これら3つを発注者が決めることは、請負事業主が自ら業務の遂行に関する管理を行っていないことになるとされています(2026年10月30日確認)。こうした指示は口頭に限られません。発注者が作業の内容、順序、方法を文書で詳細に示し、そのとおりに作業が行われている場合も同じ扱いとされています。
EX84-01で渡した見本は、欄の順序と読みやすさの参考です。どの順で作業するか、誰が何時に作業するかを指定するものではありません。請負労働者の配置と一人ひとりへの仕事の割付、作業の進め方を決めるのは、相手の会社です。
窓口を一本にすること自体は、条件を取りまとめるうえで役立ちます。ただし、窓口を通した形にすれば必ず適法になるとは言えません。文書を経由していても、作業の内容や順序を詳細に示してそのとおりに作業させている実態なら、同じ判断になります。
会話を一律に禁じる運用にする必要はありません。同じ資料は、業務に関係のない日常的な会話をしても指揮命令を行ったことにはならないとしています(2026年10月30日確認)。安全衛生上緊急に対処する必要のある事項について発注者が労働者へ指示を行う場合も、その行為だけで偽装請負と判断されるものではないと例示されています。
厚生労働省の疑義応答集(第3集)は、システム開発を題材にした資料です。そこでは、労働者派遣と請負などのどちらに当たるかは、契約の形式ではなく実態に即して判断されると書かれています(2026年10月30日確認)。システム開発に固有の説明をそのまま他の業種へ広げることはできませんが、契約の名前だけで区分が決まらない点は、依頼の進め方を見直すときの手がかりになります。
納品後の照合は、元条件の不足と追加要望を分ける
納品を受け取ったら、合意版の条件と成果物を項目ごとに照合します。見つかった差は、合意済みの条件を満たしていない不足と、あとから出てきた新しい要望に分けます。
EX84-01の照合では、合意した検収基準の4点を順に見てください。
- 12件のID、商品名、税込価格、単位が、承認済みの正本v2と一致しているか
- 12件に欠落と重複がないか
- A4横1ページのPDFで、文字が切れていないか
- XLSXが編集でき、PDFと同じ値になっているか
『確認しました』や『いい感じです』で検収を終えることは避けます。どの項目を何と照らして、どうなっていたかを書き残します。合否を決めるのは商品担当責任者で、11月9日15時が検査を終える期日です。
不一致が出た場合は、合意版のどの欄と違うのかを示して相手へ伝えます。正本v2の値と納品物の値を並べて、差のある箇所を書き出してください。どちらが誤っているかは、商品担当責任者が正本を確かめて判断します。発注側の正本に誤りがあったときは、更新した版と、費用と期限への影響を相手へ共有します。必要な合意を得てから修正を依頼し、同じ4点でもう一度照合してください。
合意したあとに、商品写真も載せたいという希望が社内から出ることもあります。EX84-01で合意した欄は商品ID、商品名、税込価格、単位の4つで、写真の列は入っていません。すでにある写真を載せる場合も、撮影や制作を頼む場合も、合意した仕様からの変更になります。どちらも不足の修正ではなく追加の要望として扱い、費用と日程への影響を相手へ尋ねます。費用・契約の承認者と相手の双方が合意するまでは、追加部分を確定させないでください。
追加のときに記録するのは、変更する内容、追加の費用、新しい期限、承認した人の4つです。無償の修正として頼めるかどうかを先に決めると、合意済みの条件との境目が見えなくなります。まず境目を確かめ、そのうえで費用と日程を相談してください。
発注前に確かめる5つの条件
次の5つは、発注へ進んでよいかを確かめる条件です。依頼文を送っただけの状態と、条件が合意できた状態を分ける基準として使います。
- 依頼文だけで、対象の12件、納品物2点、対象外の4つ、資料の版、提出先、納期と検査完了日を相手が説明できること
- 相手の疑問2点に回答が付き、PDFだけでよいという受け取り方と、P07の空欄が発注前に解消されていること
- 検査する担当、検査完了日、照合する資料、文字切れなどの判定条件がそろい、合否が『確認しました』で終わらないこと
- 費用と契約を承認する人が見積りと条件を承認し、発注側と受注側が同じ版の条件に同意していること
- 法定の明示事項と契約の条件が、依頼文とは別に確かめられていること
5つのうち1つでも言えない項目があれば、まだ発注の前です。言えなかった項目には、誰へ確かめるのかと、いつまでに決めるのかを書き添えておきます。
つまずいたときの6つの戻し方
つまずいたときの動きは、照合する条件へ戻す、権限のある人へ戻す、未確定のまま残す、の3つで組み立てます。次の6つは、起きやすい詰まり方と戻し先の対応です。
- 品質の表現が曖昧なまま進んだ場合:見本のどの点を採用するのかと、ID・値・件数・形式の照合条件へ戻す
- 渡す資料が埋まっていない場合:空欄を相手に推測させず、商品担当責任者へ確認し、正本の更新と納期への影響を双方で確かめ直したうえで、更新後の版で照合し直す
- 社内の複数人から違う依頼が出た場合:確認窓口が意見をまとめ、決裁する人が条件を確定。相手の会社の従業員へ直接仕事を割り振る形は避ける
- 返信がない場合:到達の確認と回答の予定を尋ね、既読や沈黙を承諾として数えない扱い
- 追加の希望を無償の修正として頼みそうな場合:合意済みの条件との違いを確かめ、追加分は費用と期限を相談する手順
- 承認する人が不在の場合:あらかじめ合意した代理の権限がなければ未確定として戻し、権限のない窓口が費用や範囲を確定させない区分
6つに共通するのは、決まっていない条件を推測で埋めない形です。空いている欄に、確かめる相手と決まる予定日が書かれていれば、相手はどこで待てばよいかを判断できます。資料や合意が足りないときは、進めずに戻す判断もできます。
次の1通で試す3つのこと
次に出す外注の依頼を1通だけ選び、10項目の欄をつくって書き写してみてください。空いたままの欄が、相手から質問が来やすい場所です。
- 曖昧な言葉を、ファイル形式、載せる項目、対象の件数、照合元の資料、表示の条件へ分解
- 決まっていない項目は、決まらない理由と決まる予定日を添えて【未確定事項】へ記載
- 相手の質問への回答を、やり取りではなく依頼文の欄へ書き直して合意版をつくる
ここで試すのは、指示の言い方を整えることではありません。決まっていない条件を、依頼文の欄として見えるようにする方法です。相手の経験や段取りの差で、やり取りの回数が変わることもあります。この記事で扱ったのは、発注前に自分の側で埋められる部分です。欄が埋まっていれば、次に確かめる相手と期日を、同じ文書から読み取れます。
Q&A
Q1. 依頼文に書けない条件があるときは、空欄のまま送ってよいですか。
空欄にせず、【未確定事項】へ決まらない理由と決まる予定日を書いてください。EX84-01では、資料v1のP07の税込価格と納品のファイル形式を未確定として挙げ、11月4日12時までに決めて正本v2を渡す形にしています。なお、フリーランス法が適用される取引では、明示事項のうち定められない正当な理由があるものの扱いが案内されています(公正取引委員会、2026年10月30日確認)。案内では、理由と決まる予定日を委託時に明示し、決まったら直ちに明示する流れです。発注前の相談と、この明示義務は別に確かめてください。
Q2. 外注先の担当者へ、作業の順番まで伝えてよいですか。
契約の当事者である相手の会社へ、成果物の条件を伝えたり、作業工程の見直しを注文したりすることはできます。厚生労働省の疑義応答集は、こうした要求や注文は当事者間で行われるもので、直接の指揮命令ではないと説明しています(2026年10月30日確認)。避けたいのは、相手の労働者へ直接、仕事の順序や方法、配置、一人ひとりへの割付を決める形です。文書を経由しても、そのとおりに作業させている実態なら同じ扱いとされています。安全衛生上緊急に対処する必要のある事項の指示は、その行為だけで偽装請負と判断されるものではないと例示されています。
Q3. 合意したあとに出た追加の希望は、無償の修正として頼めますか。
まず、合意済みの条件を満たしていない不足なのか、合意した仕様からの変更なのかを分けてください。EX84-01で合意した欄は商品ID、商品名、税込価格、単位の4つで、写真の列は入っていません。すでにある写真を載せる場合も、撮影や制作を頼む場合も、仕様からの変更として扱います。費用と日程への影響を相手へ尋ね、費用・契約の承認者と相手の双方が合意するまで、追加部分は確定させません。無償か有償かを一律に決めることはできないため、見積りと契約の条件に戻して確かめてください。



