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「生成AIと秘書代行、どちらに任せる?」が決まる、事務の使い分け

約17分
「生成AIと秘書代行、どちらに任せる?」が決まる、事務の使い分け

毎日の事務を任せたくても、生成AIに書かせるのか、秘書代行へ頼むのか、自分で抱えるのかが決まりません。

迷う理由は、任せ先を先に選ぼうとしているからです。事務を5つの軸で分けてから並べ直すと、違いが見えてきます。生成AIが出せるもの、秘書代行が代わりにできること、社内に残すしかないものの3つです。ここで扱うのは、定型メールの下書き、社外との日程調整、単価見直しの交渉という3つの事務です。同じ軸で判断して、分担表の1列を書き上げるところまで進みます。

  • 任せ先を選ぶ前に、事務を入力の定型度、外部とのやり取り、判断量、機密性、名義と最終責任の5軸で分けます。
  • 判断量が大きい、機密性が高い、合意や署名の責任を伴う、のどれかに触れる事務は社内に残し、外へ出しません。
  • 残った事務のうち、社外と直接やり取りするものは秘書代行、やり取りしないものは生成AIの下書きへ回します。
  • 生成AIの利用条件とデータの扱いは、提供元の公開情報で確かめます。秘書代行は、契約範囲、受付時間、機密保持、承認経路、渡す権限を契約書で確かめます。
  • 2週間ほど試したうえで、成果物、差し戻し、未対応、機密性、承認経路の5項目で続けるかどうかを判断してください。
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生成AIと秘書代行の使い分けは、任せ先より先に軸を決める

使い分けの結論を先に書きます。生成AIは材料がそろった文章の下書き、秘書代行は決めた範囲内で社外とやり取りする連絡、社内は決定と合意です。3つは互いに置き換わるものではなく、同じ事務の別の工程を担います。

迷いが起きるのは、「メール対応」や「日程調整」という、工程をまとめた名前で考えるからです。1つの名前の中に、材料を集める、文章を作る、相手へ送る、相手と決める、という別の性質の作業が入っています。どこを切り出すかが決まれば、任せ先の判断は難しくありません。

先に任せ先を選ぶと、合わない仕事が混ざります。生成AIへ社外への最終連絡まで任せると、名義と責任の置き場所が消えてしまいます。条件の決定まで秘書代行へ渡した場合、交渉の結果を社内が説明できません。軸で分けておくほうが、後戻りは少なく済みます。

事務を分ける5つの軸

分け方は5つの軸で足ります。1つの事務について、上から順に当てはめてください。

  1. 入力の定型度:材料がどこまでそろった状態で始められるかを見ます。毎回同じ形でそろうなら高、形は決まっていても相手ごとに変わるなら中、毎回ゼロから考えるなら低です。
  2. 外部とのやり取り:社外の相手と直接やり取りするかどうかで分けます。やり取りなし、決めた範囲の連絡あり、条件を決める交渉ありの3段階です。
  3. 判断量:その場で決めることの大きさを見ます。選ぶ余地がないなら小、決めた範囲から選ぶなら中、範囲そのものを決めるなら大です。
  4. 機密性:外へ出てよい情報かどうかを見ます。出ても困らないなら低、秘密保持の取り決めの範囲で渡せるなら中、取り決めだけでは渡せないなら高です。
  5. 名義と最終責任:その仕事の結果が誰の名前で外へ出るかを見ます。社内が送信前に確認する、社内の名義で委託先が連絡する、社内の決定者が合意して署名する、の3つに分かれます。

5つの軸は、どれか1つだけでは足りません。たとえば定型度が高くても、機密性が高い文書はあります。機密性が低くても、条件を決める交渉なら社内に残ります。

入力の定型度、外部とのやり取り、判断量、機密性、名義と最終責任という5つの軸と、それぞれの3段階の目安、任せ先となる生成AI・秘書代行・社内を並べた図

生成AIに向く事務は、入力が定型で社外へ直接出ないもの

生成AIが向くのは、5軸で見て定型度が高く、外部とのやり取りがなく、判断量が小さく、機密性が低い事務です。成果物は完成品ではなく下書きになります。下書きは社内の人が読んで直し、社内の名義で送ります。送る前の確認を外すことはできません。

入力として渡すのは、相手の呼び方、伝える事実、文章の長さ、避けたい言い方の4つで足ります。受注のお礼の下書きなら、受注した品目、納期、返信してほしい期日を並べて書かせます。文章の良さを見る前に、事実が抜けていないかを確かめてください。

業務の情報を入れる前に、使っている生成AIの利用条件とデータの扱いを、提供元の公開情報で確かめます。保存や学習に関する設定は、契約の種類や管理者の設定で変わる場合があるからです。OpenAIはChatGPTのプライバシーに関する案内を公開しています。画面の名前や手順は変わるため、ここでの説明ではなく提供元の最新の案内を見てください。

人の側に残るのは3つです。事実が合っているかの確認、社外へ出す文の最終確認、入れてよい情報かどうかの線引きです。この3つを残しておけば、下書きを任せても説明できない結果は出ません。

秘書代行に向く事務は、社外とのやり取りが決めた範囲で収まるもの

秘書代行が向くのは、社外とのやり取りがあり、判断は決めた範囲から選ぶだけで済み、機密性が中までの事務です。生成AIとの違いは、相手の都合に合わせて動けることと、社内の名義で連絡できることにあります。日程調整や来客の受付のように、相手の返事で次の動きが変わる仕事は、秘書代行の側へ寄せられます。

頼む前に契約書で確かめる項目は、次の5つです。1つ目は契約範囲で、どの業務まで対応するかが業務名で書かれているかを見ます。2つ目は受付時間です。何時から何時まで、どの曜日が対象かを確かめます。3つ目は機密保持の取り決めで、扱う情報の種類と再委託の可否まで書いてあるかを読みます。4つ目は承認経路です。社外へ出す前に社内の誰が確認するかを、名前で決めておきます。5つ目は渡す権限の範囲で、閲覧だけか、予定の作成までかを分けます。

5つのうち1つでも決まらない項目があれば、頼もうとしている業務はまだ渡せません。契約や体制の見方をもう少し広げたいときは、オンライン事務代行の選び方をまとめた記事もあわせて見てください。

受付時間の外で起きたことは、秘書代行の側では止まります。止まったときに誰へ連絡するかは、社内側で先に決めてください。急ぎの連絡先が1つ決まっていれば、時間外の件が翌営業日まで放置される事態を避けられます。

社内に残す事務は、判断・機密・対外責任のどれかに触れるもの

社内に残すのは、範囲そのものを決める仕事です。判断量が大きい、機密性が高い、合意や署名の責任を伴う、のどれか1つに当てはまれば、外へ出しません。

たとえば単価の見直し、人に関わる相談、取引を続けるかどうかの決定が当てはまります。材料をそろえる作業までは任せられても、決める場面は社内に残ります。

残す理由は、説明する相手がいるからです。値上げに応じた理由も、断った理由も、後から取引先や社内へ説明するのは決定した側になります。下書きや連絡の代行があっても、説明の責任は移りません。

迷ったときは、機密性を定型度より先に見ます。定型度が高い文書ほど外へ出しやすく感じますが、定型の文書にこそ単価や取引条件が並んでいることがあります。順番を1つ入れ替えるだけで、外へ出す範囲は変わります。

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同じ5軸で並べると、分かれ目は2か所にある

3つの任せ先を同じ軸で見ると、決め方は2段階になります。

1つ目の分かれ目は、社内に残すかどうかです。判断量が大、機密性が高、合意や署名の責任あり、のどれかに触れたら社内に残します。1つでも触れたら、ほかの軸が有利でも外へは出しません。

2つ目の分かれ目は、社外と直接やり取りするかどうかです。やり取りがあるものは秘書代行、ないものは生成AIの下書きへ回します。順番を逆にすると、機密の高い仕事を定型度だけで外へ出してしまいます。

誤りやすいのは、定型度の高さだけで生成AIへ渡す場面です。見積書の文面は形が決まっていますが、単価と原価が並びます。形が決まっていることと、外へ出してよいことは別です。

もう1つは、社外とのやり取りがあるという理由で、条件の決定まで秘書代行へ渡す場面です。候補日を相手へ示す連絡と、支払条件を決める連絡は、同じ連絡でも軸の値が違います。候補日を示す連絡は判断量が中、支払条件を決める連絡は大になります。

3つ目は、生成AIの下書きをそのまま社外へ送ってしまう形です。下書きは成果物ではなく材料です。社内の名義で出す以上、読んで直す工程は飛ばせません。

3つの事務を同じ軸で判断した分担表

ここからは、3つの事務を同じ5軸で判断します。業務名や人数は説明のために作ったもので、実在の取引ではありません。

扱うのは、受注のお礼と納期連絡の下書き、社外4名との打ち合わせ日程の調整、外注先への単価見直しの交渉の3つです。

分担表の項目受注のお礼と納期連絡の下書き社外4名との打ち合わせ日程の調整外注先への単価見直しの交渉
入力の定型度高中低
外部とのやり取りなしあり・決めた範囲の連絡あり・条件を決める交渉
判断量小中大
機密性低中高
名義と最終責任社内が送信前に確認社内の名義で委託先が連絡社内の決定者が合意し署名
任せる先生成AI秘書代行社内
社内が必ず残すこと品目・納期・返信期日を見て社内の名義で送る候補日の優先順位と会議の目的を先に決める条件の決定と合意、署名
渡す権限と止め方社名と金額を伏せた材料だけ/設定が合わなければ使いません共有カレンダーの閲覧と予定作成まで/契約終了日に停止社内の決定者のみ/権限は外へ出しません

表の縦に並ぶ5軸は、3つの事務で違う値になります。下書きは機密性が低く、社外へ直接出ないため、生成AIへ回せます。日程の調整は社外とやり取りしますが、決めるのは社内が示した候補日の中だけです。だから秘書代行の範囲に収まります。単価見直しは判断量が大で機密性も高いため、1つ目の分かれ目で社内に残す側です。

自分の事務を当てはめるときは、右へ1列ずつ足していきます。1列が埋まらないうちは、外へ出す判断を保留してください。

受注のお礼と納期連絡の下書きは生成AI、社外4名との日程調整は秘書代行、外注先への単価見直しの交渉は社内と判断した、同じ5軸での比較を示した図。説明のために作った例であることを添えている

分担表が使える状態になったかどうかは、次の4つで確かめられます。

  • 1列ごとに、任せる先と社内が必ず残すことの両方が埋まった状態です。
  • 通常の締切と、受付時間の外で起きたときの連絡先と優先順位が書いてあります。
  • 渡す権限の範囲と、止める日と止める手順が決まっています。
  • 続けるかどうかを、感想ではなく、このあと挙げる5つの確認項目で判断できます。

空いている欄は、未決の印として残しておいてください。相談のときに最初に話す材料になります。

2週間だけ試して、合否を5つの確認項目で決める

決めた分担は、短く試してから広げます。期間は業務の発生回数に合わせて決めてください。ここでは2週間を例にします。月に1回しか発生しない事務なら、2回分が通るまで見るほうが確かです。

試す対象は、分担表の1列に絞ります。複数の列を同時に動かすと、止まった原因がどの事務のものか分かりません。

続けるかどうかは、次の5つで判断します。感想ではなく、残った記録を見ます。

  1. 成果物:頼んだ形で出てきたかを見ます。下書きなら品目と納期と返信期日の欄が埋まった文、日程調整なら確定した日時と相手全員の了解が残っているかで判断します。
  2. 差し戻し:直した回数と、直した理由の種類を数えます。材料が足りなかったのか、指示が足りなかったのか、範囲の外だったのか。理由の種類で、次に直す場所が決まります。
  3. 未対応:受付時間の外や範囲の外で止まった件数を数えます。止まったときに社内の誰へ渡ったかも、合わせて記録します。
  4. 機密性:渡した材料を読み返し、外へ出してはいけない情報が混ざっていないかを確かめます。混ざっていた場合は、材料の作り方を直すまで次へ進めません。
  5. 承認経路:社内の承認を通らずに社外へ出たものがあるかを数えます。ここは0件が条件です。

5項目のうち、差し戻しと未対応は多くても構いません。初回は材料と指示の形が定まっていないため、回数より理由の内容を見ます。機密性と承認経路だけは、1件でも出た時点で止めて作り直します。

短く試したあとに見る成果物、差し戻し、未対応、機密性、承認経路の5つの確認項目と、機密性と承認経路は0件を条件にすること、期間は発生回数に合わせることを示した図

試す前に費用の目安を知っておきたいときは、事務代行の費用相場をまとめた記事もあわせて見てください。

よくある4つの失敗と、その場での戻し方

分担が決まらないときは、次の4つのどれかで止まっています。

  • 「雑務全般」とまとめた依頼:成果物が1つある単位へ分け直します。「メール対応」なら、受注のお礼の下書き、納期連絡の下書き、問い合わせの一次返信の下書きへ割ります。
  • すぐ返ってくる前提で頼んでいる:受付時間と優先順位を先に合意します。時間外に起きた件の連絡先を社内で1つ決め、応答の速さを相手に求める形から離れます。
  • 権限をまとめて渡した:業務ごとの最小権限へ戻します。日程調整なら共有カレンダーの閲覧と予定の作成までで足り、受信箱や会計の情報まで開ける必要はありません。
  • 依頼の準備のほうが重い:材料の置き場所と形を1つに決めてから出し直します。整えられない事務は、いったん社内へ戻すほうが早いです。

どれも、全部を作り直す必要はありません。止まっている1列を選び、任せる先と社内が残すことの欄を書き直すところから戻せます。

まとめ:次の1件を5軸で分けて、分担表の1列を書く

生成AIと秘書代行の使い分けは、任せ先を選ぶ作業ではなく、事務を軸で分ける作業です。入力の定型度、外部とのやり取り、判断量、機密性、名義と最終責任の5つで分ければ、どこへ回すかは後から決まります。

社内に残すのは、範囲そのものを決める判断、外へ渡せない情報、合意と署名の責任です。残った事務は、社外とやり取りするかどうかで秘書代行と生成AIに分かれます。生成AIの利用条件は提供元の公開情報で、秘書代行の対応範囲は契約書で確かめてください。

最初の一歩は1列で足ります。いま手元でいちばん時間を取られている事務を1つ選び、5軸の値を書き、任せる先と社内が残すことの欄を埋めてみてください。2週間試して、成果物と差し戻しと未対応、そして機密性と承認経路の記録が残れば、次の1列へ進めます。

Q&A

Q1. 秘書代行の担当者が生成AIを使うのは、問題ないですか。

契約書で生成AIの利用と情報の扱いをどう決めているかによります。委託先が使う場合も、どの情報を入れてよいか、出力を誰が確認するかを、社内の承認経路に合わせて書き込んでおきます。確認が取れないうちは、下書きの作成だけ社内へ戻すほうが安全です。

Q2. 生成AIと秘書代行を同じ事務に両方使うと、やり取りが増えませんか。

1列の中で工程を分けておくと増えにくくなります。下書きの作成を生成AIへ、相手への送信と返事の受け取りを秘書代行へ置き、受け渡しの場所と期限を1か所に決めてください。やり取りが増えるのは、受け渡しの場所が2つに分かれたときです。

Q3. 試した結果が思わしくない場合、契約はすぐ切るべきですか。

5つの確認項目のどこで止まったかを先に見ます。差し戻しと未対応が多いだけなら、材料と指示の形を直してもう1回分試せます。機密性と承認経路で止まった場合は、権限を最小へ戻し、分担表を書き直すまで次の依頼を止めてください。

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