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「定型事務を生成AIに任せたい」を形にする、入力から確認までの仕組み化

約19分
「定型事務を生成AIに任せたい」を形にする、入力から確認までの仕組み化

毎月の請求書の送付前チェックを生成AIへ任せたい担当者が、入力してよい情報と人が見る範囲を決められないまま止まります。

先に決めるのは、生成AIへ渡す入力と、人が最後まで持つ判断の線です。任せるのは下書きと整理で、事実の確定、例外の判断、最終承認、外部への送付は人の側に残ります。ここで使うのは、架空の請求情報1件だけです。送付前確認メモの下書きを作らせ、元の請求情報と一項目ずつ照合する流れを追いかけます。読み終えたら、合成データ1件で同じ試行の記録を作れます。

  • 生成AIに任せるのは下書きと整理で、事実の確定、例外の判断、最終承認、外部への送付は人に残します。
  • 試す前に、使う生成AIの公式情報を開きます。確かめるのは、入力できるデータ、モデル改善への利用、履歴と保持、ファイル、管理者の設定です。
  • 定型事務は、入力、AIの処理、出力、人の照合、承認の5つに分けてから、任せる範囲を決めます。
  • 照合するのは、取引先、請求日、金額、支払期限、送付方法、発注番号の6項目です。
  • 記録に残すのは、入力版、出力版、照合結果、修正箇所、承認者、確認日、例外の戻し先の7項目になります。
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生成AIに任せるのは下書きと整理、確定と承認は人に残す

定型事務を生成AIへ任せるときに先に決めるのは、どこまでを下書きとして渡し、どこから人が確定させるかの線引きです。生成AIとは、入力した文章をもとに、新しい文章や表を作って返すしくみのことです。定型事務は、毎月や毎週、同じ手順でくり返す事務を指します。

生成AIが得意なのは、決まった形へ情報を並べ直す作業です。抜き出し、言い換え、確認項目の並べ直しは、下書きとして使えます。一方で、その情報が正しいかどうかは、原資料を持っている人しか決められません。

生成AIは、文のつながりから続きを組み立てるしくみで動いています。原資料に無い発注番号でも、文章としてはなめらかに埋まってしまうことがあります。読みやすい文が返ってきたことを、正しさの根拠にはできません。

人の側に残すのは4つです。事実の確定、例外の判断、最終承認、外部への送付になります。この4つまで渡すと、間違いが外へ出るまで誰も気づけません。どのくらい早くなるかは、実際に測るまで分かりません。

生成AIに任せるのは下書き作成と情報の並べ直しで、事実の確定、例外の判断、最終承認、外部への送付は人が持つという境界を左右に分け、読みやすい文は正しさの根拠にならないという注意を添えた図

 

生成AIへ任せやすい定型事務の、3つの条件

任せる相手を決める前に、その事務が次の3つを満たすかを見ます。1つでも欠けていると、下書きのあとの手直しが大きくなりがちです。

  • 入力がいつも同じ形で手に入る:どの資料のどの項目を見ればよいかが、毎回決まっています。
  • 完成形が決まっている:できあがりの形と、見る項目の数が先に決まっているものです。
  • 外へ出る前に止められる:社内で止まる工程なので、間違いに気づいたときに引き返せます。

逆に向かないのは、入力が毎回違う事務です。正解が誰かの記憶の中にしかない作業も、下書きの良し悪しを判定できません。送った瞬間に相手へ届く工程も、試す場所には向きません。

この記事で試すのは、請求書を送る前の確認メモを作る作業です。毎月同じ6項目を見る作業で、送付そのものは人が行います。まずは、この確認メモ作りの1つに絞って進めます。

試す前に、使う生成AIの公式情報で確かめる5点

入力してよい情報の範囲は、使うツールの公式情報を読んでからでないと決められません。確かめるのは、次の5点です。

  • 入力してよいデータ:個人情報や取引先の実データを入れてよいのか、どこまでかを見ます。
  • モデル改善への利用:入力した内容が学習に使われる条件と、使われない条件を分けて読みます。
  • 履歴と保持:やりとりがどこに残り、消したときにどう扱われるかの説明です。
  • ファイルの扱い:貼り付けた文章と、添付したファイルで扱いが違う場合があります。
  • 管理者の設定:会社の契約で使うときは、管理する側で選べる項目も一緒に確認します。

ChatGPTを例にすると、OpenAIのヘルプセンターに案内が公開されています。通常のチャットとファイルの保持についてはChat and file retention in ChatGPTです。履歴を残さない使い方はTemporary chat in ChatGPTにまとまっています。どちらも2026年9月25日に開いて確認した内容です。

組織で使うプランは、OpenAIが別のページで条件を公開しています。開くページはBusiness data privacy, security, and complianceです。ChatGPT Businessなどで扱う組織のデータは、既定ではモデルの学習に使われないと説明されています。2026年9月25日に開いて確認した内容です。この条件は対象のプランに限られるため、個人向けの一般プランへそのまま当てはめないでください。

仕様は変わるので、試す日に自分で開いて確かめるのが確実です。ボタンの名前や画面の位置も変わるため、この記事では画面の操作手順を書きません。試行でやるのは、テキストを入力して、返ってきた文章を保存するところまでになります。

会社の契約で使うなら、入力してよい範囲を管理する担当へ先に聞いておくと安心です。ただし、個人情報、顧客の実データ、契約書の内容、口座情報は、この試行には入れません。試すためのデータは、このあと架空の情報で作ります。

定型事務を、入力・AIの処理・出力・人の照合・承認の5つに分ける

任せる範囲を決めるには、事務を5つの工程へ切り分けるのが早道です。切り分けてみると、生成AIが担うのは真ん中の2つだけだと分かります。

工程担うのは先に決めておくこと
入力人渡す項目と、渡さない項目
AIの処理生成AI任せる作業の範囲と、推測を止める指示
出力生成AI成果物の形と、書き分ける5つの区分
人の照合人照合する項目と、見る順番
承認人承認者と、記録の残し方

表で見たいのは、入力と照合と承認が人の列に並ぶところです。生成AIが動くのは、渡された文字を並べ直す2工程だけになります。

工程を分けずに丸ごと任せると、どこで間違えたのかを後から追えません。入力の作り方が原因だったのか、照合を飛ばしたのかが混ざってしまいます。分けておけば、直す場所が1つに決まります。

定型事務を入力、AIの処理、出力、人の照合、承認の5工程に分け、生成AIが担うのは真ん中の2工程だけで、分けておくと直す場所が1つに決まることを示した図

 

架空の請求情報1件を用意し、成果物の形を先に決める

試行で使うのは、実データではなく合成データ1件です。合成データとは、説明や練習のために自分で作った架空のデータのことです。今回の合成データは架空の請求情報で、実在の取引先や取引ではありません。使う項目は、次の6つにそろえます。

  • 取引先:取引先A
  • 請求日:2026年9月30日
  • 金額:120,000円
  • 支払期限:2026年10月31日
  • 送付方法:メール
  • 発注番号:未確認

発注番号を空欄にせず未確認と書いているのは、わざとです。生成AIが埋めたがる場所を、先に1つ用意しておきます。発注番号の欄が番号で埋まって返ってきたら、その出力は使えません。

成果物は、送付前確認メモに決めます。中身は、次の5つに分けて書かせます。

  • 確定情報:渡した資料にそのまま書かれている項目です。
  • 未確認情報:資料に書かれていない項目を、そのまま並べます。
  • 送付前に人が見る項目:送る前に人の目で見る項目を、名前で挙げます。
  • 停止理由:足りない項目があるときに、止める理由を書く場所です。
  • 次の行動:誰が何を確かめれば先へ進めるかを、1行で書かせます。

区分が5つに分かれていると、読む側は迷いません。確定情報だけを見て照合し、未確認情報と停止理由を見て、送るか止めるかを決められます。文章のうまさを見る必要はありません。

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コピーして使える入力文と、返ってくるメモの形

入力文は、毎回同じ形で渡せるように文章で固定します。次の文をそのままコピーし、【 】の中だけを自分の1件へ置き換えてください。

次の請求情報から、送付前確認メモの下書きを作ってください。

条件は5つあります。

1. 書かれていない項目は推測せず、未確認と書いてください。

2. 見出しは、確定情報/未確認情報/送付前に人が見る項目/停止理由/次の行動の5つに分けてください。

3. 金額と日付は、渡した文字をそのまま写してください。

4. 未確認の項目が1つ以上あるときは、停止理由に足りない項目の名前を書いてください。

5. 送る文面そのものは作らないでください。

【取引先】取引先A

【請求日】2026年9月30日

【金額】120,000円

【支払期限】2026年10月31日

【送付方法】メール

【発注番号】未確認

差し替えるのは【 】の6項目だけです。条件の5つは、別の定型事務へ移すときもほぼそのまま使えます。社名や人の名前が入る欄は、試行のうちは架空の名前へ置き換えておいてください。

返ってくるメモは、たとえば次の形になります。次に置いたのは説明のために書いた出力例で、実際のツールを動かして得た結果ではありません。

送付前確認メモ(出力例)

■ 確定情報

・取引先:取引先A

・請求日:2026年9月30日

・金額:120,000円

・支払期限:2026年10月31日

・送付方法:メール

■ 未確認情報

・発注番号:渡された情報に記載なし

■ 送付前に人が見る項目

・金額、支払期限、送付方法、発注番号

■ 停止理由

・発注番号が未確認のため、確認が済むまで送付を止める

■ 次の行動

・発注番号を注文書で確かめ、そのうえで承認者へ回す

この形なら、照合する人は確定情報の5行を元の請求情報と突き合わせれば済みます。未確認情報と停止理由が空のまま返ってきたときは、条件が伝わっていません。入力文の5つの条件を、1つずつ読み直してください。

照合は6項目を一つずつ、完了かどうかは別の人が再現できるかで見る

出力を受け取ったら、原データと6項目を一つずつ突き合わせます。原データとは、メモのもとにした請求情報そのものです。まとめて見比べるより、項目名を1つずつ指して確かめるほうが確実です。

  1. 取引先:原データの取引先Aと、メモの確定情報が同じ文字かを見ます。
  2. 請求日:2026年9月30日が、そのまま写されているかを見ます。
  3. 金額:120,000円の桁と単位が、原データと一致しているかどうかです。
  4. 支払期限:2026年10月31日が入っていて、請求日より後の日付になっているかを見ます。
  5. 送付方法:メールのままか、別の送り方へすり替わっていないかを確かめます。
  6. 発注番号:未確認のまま残っているかどうかが分かれ目です。番号が作られていたら、その出力は破棄します。

6項目がそろって一致したときだけ、承認へ回せます。1項目でもずれていたら、直すのは出力ではなく入力文か、任せる範囲です。文章が自然に読めることを、合格の理由にはしません。

試行が終わったかどうかは、次の4つで見ます。どれも、別の担当者が読んで同じ判断にたどり着けるかどうかです。

  • 生成AIへ渡す入力と、人が確認する原データが、別の人にも分かる形で書いてあります。
  • 期待する成果物と完了の判定が、別の担当者が読んで同じ結論になる形で決まっています。
  • 生成AIを止める例外条件と、迷ったときに相談する相手が決まっている状態です。
  • 測っていない時間短縮や精度を、成果として書いていません。

4つのうち1つでも空いていたら、そこが次に手を付ける場所です。全部を一度に埋める必要はありません。

取引先、請求日、金額、支払期限、送付方法、発注番号の6項目を一つずつ照合し、入力と原データが分かること、別の担当者が同じ判定になること、止める条件と相談先があること、測っていない数字を書かないことの4つで完了を確認する流れを示した図

 

試行記録に残す7項目

記録がないと、同じ試行を来月もう一度やり直すことになります。残すのは、次の7項目です。

項目残す内容
入力版使った入力文の全文と、何度目の書き直しか
出力版返ってきたメモの全文(要約せずそのまま)
照合結果6項目それぞれの一致と不一致
修正箇所人が直した箇所と、直した理由
承認者送付前のメモを承認した人の名前
確認日公式情報を確認した日と、試行した日
例外の戻し先止まったときに相談する相手と、報告先

この7項目がそろうと、別の担当者が同じ手順を再現できます。ここまで安定してきたら、読まれる手順書へ落とす段階です。手順書の作り方は、伝わる手順書の作り方をまとめた記事が参考になります。

止まったときの、4つの戻し方

試行は、途中で止まる前提で組んでおくと落ち着いて進められます。よくある詰まりは、次の4つです。

  • 実データを入れてしまった:その場で試行を止め、入れた範囲を書き出します。そのうえで保持と削除の条件、使える権限を公式情報で読み直し、管理する担当へ報告してください。
  • 出力をそのまま送りたくなった:自動で送る仕組みにはつなぎません。原データの照合と承認が終わるまで、次の工程へ進めない形にしておきます。
  • 出力が毎回ぶれる:入力文の言い換えだけで粘らず、任せる範囲を狭めます。メモ全体をやめて、確定情報の抜き出しだけに絞る形です。
  • ツールの仕様が変わった:公式情報を読み直し、合成データで同じ試行をやり直してから範囲を戻します。人の照合を省いたまま範囲を広げない形にしておきます。

止め方まで決めておくと、試すこと自体が安全になります。止まった回数は失敗の数ではなく、任せる範囲を決め直す材料です。次の月は、その材料から範囲を引き直せます。

まとめ:合成データ1件から、記録を残して始める

定型事務を生成AIへ任せる形は、渡す範囲と残す範囲を線で分けるところで決まります。渡すのは下書きと整理で、事実の確定、例外の判断、最終承認、外部への送付は人の側です。線を先に引くと、あとの照合が1項目ずつの確認に変わります。

入力してよい情報の範囲は、記憶ではなく公式情報で確かめます。ChatGPTを例にするなら、開くのは3つの案内です。保持の案内、Temporary Chatの案内、組織向けプランのデータ取り扱いになります。Businessなどの条件は、個人向けの一般プランには当てはめません。

最初の一歩は、合成データ1件で記録を作ることです。架空の請求情報を1件用意し、入力文を1つ固定し、返ってきたメモを6項目で照合します。直した箇所と承認者、確認日、例外の戻し先まで書き残せば、来月は同じ手順から始められます。

Q&A

Q1. 生成AIの出力が毎回違う形で返ってきます。入力文を直し続けてよいですか。

言い換えを重ねるより、任せる範囲を狭めるほうが早く落ち着きます。メモ全体をやめて確定情報の抜き出しだけに絞り、それでも6項目の一致が取れないなら、下書き作成そのものを人へ戻してください。判定の軸は文章のうまさではなく、原データとの一致です。

Q2. 社内の実データで試したほうが、結果が分かりやすいのではありませんか。

試行は合成データで進めてください。入力してよいデータの範囲は、使うツールの公式情報と、社内で管理している担当への確認で決まります。誤って実データを入れた場合は、その場で試行を止め、入れた範囲を書き出し、保持と削除の条件を確かめて管理する担当へ報告します。

Q3. 試行がうまくいったら、次はどこまで広げてよいですか。

広げてよいのは、7項目の記録がそろい、別の担当者が同じ判定にたどり着けた範囲だけです。入力の形が毎回変わる事務や、出力がそのまま外へ出る工程は、同じ手順のまま広げないでください。最終承認と外部への送付は、範囲を広げたあとも人に残します。

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