
月末が近づくと、請求書の作成、経費の照合、入金の確認が同じ数日に集まり、残業なしでは終わらない状態になりやすいです。
締め業務の平準化とは、締め日を動かすことではなく、情報が揃う工程を月中へ移す組み替えです。月末まで確定しないのは当月の実績で、締め時には実績の確定、追加分の照合、承認を残します。月末に納品や役務が完了する取引では、請求の時期を月中へ動かせない場合もあります。ここで扱うのは、請求準備、経費照合、入金照合の工程を3つの区分に分け、置き場所を決める進め方です。3業務で埋めた仮の運用例、翌月の締め予定を作る6つの手順、確認の5つの観点、崩れたときの戻し先までたどります。
- 平準化の中心は、締め日の移動ではなく工程の置き場所の組み替えです。
- 工程は「月中に完了」「月中に準備し締め時に確定」「締め時に実施」の3区分に分けます。
- 請求準備、経費照合、入金照合の3業務を同じ3区分で並べた、仮の運用例を置きます。
- 月中へ移す工程には着手条件、実施時期、担当、終了の証拠を付け、当月の実績の確定と承認は締め時に残します。
- 試すのは一業務の一巡から。比べるのは、月中と締め時の作業時間、未完了の件数、手戻りです。
締め業務の平準化は、締め日ではなく工程の置き場所を動かす
締め業務の平準化とは、締め日を動かすことではなく、工程を実施できる時期ごとに置き直す組み替えです。月末に全部を寄せている状態から、情報が揃った工程だけを月中へ出していきます。締め時に残るのは、当月の実績が固まってから行う作業です。具体的には、実績の確定、締め日までに届いた追加分の照合、承認が残ります。
山が高くなるのは、担当の作業が遅いからとは限りません。請求の金額、経費の提出、入金の着金といった情報は、月末前後に出そろいやすいです。情報が出そろう時期が月末に寄っていると、作業を速くするだけでは山が残ります。情報が届く日を変えられない工程を先に月中へ動かそうとすると、作り直しが増えます。
そこで分けるのは、作業そのものではなく情報が揃う時期です。宛先や契約の条件なら、月の前半でも確かめられます。一方で、当月の実績の金額が固まるのは月末です。同じ請求という業務の中でも、動かせる工程と動かせない工程が混ざっています。
この記事で並べる締め予定は、説明のために作った仮の運用例で、実在の会社の記録ではありません。自社の契約条件や社内の取り決めに合わせて、工程名と時期を書き換えて使ってください。
作る前にそろえる、前月の作業記録と期限の一覧
準備するのは、前月の作業記録、期限の一覧、担当の稼働予定です。期限の一覧は、取引先と取り決めた契約上の期限と、社内で決めた締切の2つに分けて書きます。新しい台帳を作る必要はありません。前月の請求一覧、経費の申請記録、入金の照合記録があれば足ります。
- 前月の作業記録:請求、経費、入金の3業務について、作業した日と手が止まった日
- 契約上の期限:取引先と取り決めた請求書の送付期限や支払期日
- 社内の締切:経費の提出期限、承認の期限、月次の数字を出す期限
- 担当の稼働予定:経理担当、申請者、承認者それぞれの不在日や他業務の繁忙
作業記録から書き出すのは4つです。作業した日、かかった時間の目安、待ち時間の長さ、情報が揃った時期。待ち時間は、資料の到着や承認を待っていた期間を指します。
前月の記録が残っていない場合は、今月の締めを記録しながら進め、今月を比較の基準にしてください。記録するのは、作業した日、かかった時間の目安、待ち時間、情報が揃った時期の4項目で、どれも省きません。期限の一覧と稼働予定は、作業記録がなくても先にそろえられます。
工程を3つの区分に分ける
工程の置き場所は、3つの区分で決めます。「月中に完了」「月中に準備し締め時に確定」「締め時に実施」の3つです。区分を決める基準は、情報が月中に揃うか、揃った情報が月末まで変わらないかの2点になります。
迷いやすいのは2つ目の区分です。月中に進めた分を完了と見てしまうと、締め時の確定が抜けます。記入のときは、未確定の取引に印を付け、確定の工程は別の行として残してください。
請求のように、月末に納品や役務が完了する取引では、請求の時期を月中へ動かせない場合があります。ヴェルクの解説も、確定済みの金額と未確定の金額を区別し、請求元の情報を先に整えることを挙げています。動かすのは情報の整理で、確定そのものは月末に残す形です。
平準化で省けないのは、金額の正確さ、取引先との期限、承認の責任です。重複している確認や二度手間は減らせますが、この3つは月中へ移しても軽くなりません。先に決めるのは締め時に残す確認で、動かせる工程を選ぶのはそのあとです。

翌月の締め予定を作る6つの手順
翌月の予定は、6つの手順で作ります。書く場所は表計算ソフトでも紙でも構いません。前月の記録を見ながら、工程の行を1行ずつ埋めていきます。
- 前月の作業記録、契約上の期限と社内の締切、担当の稼働予定を1か所に集める
- 工程ごとに、作業した日、かかった時間の目安、待ち時間、情報が揃った時期を書き出す
- 工程を「月中に完了」「月中に準備し締め時に確定」「締め時に実施」の3区分に分ける
- 3業務の工程を同じ区分で記入し、月中の確認日と締め時の追加分の照合を予定に入れる
- 提出者、処理者、承認者を分け、期限と未提出時の連絡先を合意しておく
- 一業務で一巡だけ試し、月中と締め時の作業時間、未完了の件数、手戻りを前月と比べる
手順5で分けるのは、提出者、処理者、承認者の3つの役割です。マネーフォワードの資料にも、提出期限を社内で明確にする提案があります。日次や週次で伝票や経費を処理し、進捗を見える形にすることも同じ資料の提案です。連絡先が決まっていないと、未提出に気づいたあとの動きが止まりやすくなります。申請と承認の期限の決め方は、経費精算の申請・承認の流れを整える方法でも触れています。
6つを一度に全部やり切る必要はありません。手順1から3までで、どの工程が動かせるかは見えてきます。手順4以降は、一業務だけで試してから広げる形で構いません。
請求準備・経費照合・入金照合で埋めた締め予定の例
次の表は、3つの業務を同じ区分で並べた仮の運用例です。着手条件はその工程を始められる状態、終了の証拠はその工程が終わったと分かる記録を指します。自社で書くときは、この2つが空欄の行を残さないようにしてください。
表にある「証憑」は、領収書や請求書など、取引を裏づける書類のことです。実施時期の「月中の確認日」は、この例では週に1回程度としています。何回が合うかは自社で決める部分です。月中の工程が終わっても業務全体が終わったわけではなく、終了の証拠はその1行の工程についてだけのものです。
区分ごとの件数はそろいません。この例では請求準備だけ4工程あり、締め時に残る工程が2つ続きます。自社の工程数は業務ごとに違うため、同じ数にそろえる必要はありません。
入金で分けておきたいのは、2つの状態です。入金はあるのに対応する請求が特定できない状態と、支払期日を過ぎても入金がない状態は別です。照会が終わっていない入金を未入金として扱うと、すでに払っている取引先へ督促することになります。表では、前者を保留の行、後者を支払期日を過ぎた請求の行として分けています。
保留が出る工程は、表とは別の一覧へ書き出してください。保留のまま締めに入ると、誰が、いつまでに、どこまで照会したのかが分からなくなります。記入例は次のとおりです。
- 工程:結び付かない入金の照会と保留(入金照合)
- 対象:入金はあるが、対応する請求や金額の内訳を特定できない明細
- 記録:経理担当(記録した日を記入)
- 照会:営業担当(照会した日と相手を記入)
- 照会の結果と現在の状態:回答待ち、一部判明、特定できずのいずれかを記入
- 確認期限:締め前の最終確認日
- 判断者:社内の責任者
この記入例が埋まっていれば、担当と確認期限と判断者がはっきりし、照会がどこまで進んだかもたどれます。確認期限までに結果が出ない場合は、現在の状態と未解決の理由を添えて、社内の責任者へ判断を戻してください。請求を特定できないまま請求一覧を照合済みにすると、翌月に差額が残ります。会計上の扱いは社内の取り決めに従い、迷う場合は税理士などの専門家へ確かめてください。

移せたかどうかを確かめる5つの観点
確認は2回に分けます。予定を作った直後に見るのは、記入の抜けと、比較の準備ができているかです。実績の比較は、一巡を試したあとになります。
- 予定を作った直後:月中へ移す工程に、着手条件、実施時期、担当、終了の証拠の4つが記入済み
- 予定を作った直後:当月の実績の確定と承認が、締め時の工程として予定に残っている
- 予定を作った直後:締め日までに届く追加分と、前月以前から残る未提出分の確認が、締め時の予定に記載済み
- 予定を作った直後:保留の記入欄が用意され、運用中は担当、確認期限、判断者、照会の結果を空欄にしない取り決めがある
- 一巡を試したあと:月中と締め時の作業時間、未完了の件数、手戻り、取引の件数を、前月と同じ範囲で記録済み
5つ目で件数も並べるのは、取引の量が少なかった月の結果かもしれないためです。月末の作業時間が短く見えても、量が減っていれば置き場所の効果とは読めません。ただし量は判断材料の一つで、これだけで平準化の効果とは言えません。難易度、担当の人数、営業日の数、例外の処理、ほかの改善も結果に混ざります。移した対象が入金なら、入金明細の件数も並べてください。
比べるときは、前月と今月で範囲をそろえてください。月中の作業時間と締め時の作業時間を分け、担当ごとに記録しておくと、負荷が他の担当へ移っただけの月も見つかります。遅れや誤りが出た工程は、原因を翌月の予定へ書き戻します。
予定が崩れたときの戻し先
次の表は、予定が崩れたときに起きやすい代表的な5つの形と、戻し先を並べたものです。自社で起きる形がこれだけとは限りません。
表のどれにも当てはまらない場合は、工程の切り方が自社の業務と合っていない可能性があります。移す工程を1つに戻し、着手条件から書き直してください。取引先との契約条件、法定の期限、会計の処理方法は、平準化の都合で独断では変えません。変更が必要なときは、社内の責任者と、必要に応じて税理士などの専門家へ確かめてください。

平準化は、一業務の一巡から始める
締め業務の平準化は、締め日を動かす取り組みではありません。情報が揃う工程を月中へ出し、当月の実績の確定と承認を締め時に残す置き換えです。表の例のように、1つの業務の中にも月中へ出せる工程と締め時に残す工程が混ざっています。
最初の一歩は1つに絞ります。前月の記録を見て、請求準備、経費照合、入金照合のどれか1つを選んでください。その業務で「月中に完了」に入る工程を1つ決め、着手条件と担当と終了の証拠を書きます。書く時期は、今月の締めが終わった直後が進めやすいです。
うまく運ばない月があっても、予定の作り直しは1行から可能です。月中の余力が足りないときは、移す量を減らして同じ業務でもう一巡試すほうが、続け方を決めやすくなります。
Q&A
Q1. 締め日を数日後ろへ動かせば、同じ結果になりませんか。
締め日は取引先との契約や社内の取り決めで決まっているため、担当の判断だけでは動かせないことが多いです。動かす場合は、取引先と社内の責任者の合意が必要になります。また、日付を変えるだけでは、どの工程を月中へ出せるかは決まりません。情報が揃う工程を前へ出す作業は、締め日を変えたあとでも残ります。
Q2. 月中が忙しくなっただけではないかを、どこで見分けますか。
月中と締め時を分けて、担当ごとに作業時間、未完了の件数、手戻りを記録し、前月と同じ範囲で比べます。移した工程の担当だけでなく、承認者や申請者の分も並べると、負荷が移っただけの月が見つかります。取引の件数も並べますが、量は判断材料の一つです。難易度や営業日の数、ほかの改善も混ざるため、1か月の比較で効果を断定はできません。
Q3. 未提出の経費が締めまでに届かないときは、どう扱えばよいですか。
未提出のまま完了扱いにせず、保留として担当、確認期限、判断者を記録してください。前月以前から残っている分も、同じ一覧で追いかけます。そのうえで、締めを進めるか、翌月へ回すか、概算で費用として処理するかの判断は、社内の責任者の範囲になります。会計上の扱いは社内の取り決めを確認し、必要に応じて税理士などの専門家へ相談してください。

