
AIに報告書の下書きを書かせたのに、どこまでが資料どおりでどこからが推測か見分けられず、提出を止めた人もいます。
下書きは整っているのに、数字の根拠と原因の扱いが確かめられないままでは、出す判断ができません。詰まっているのは文章力ではなく、入力の仕分けと照合の順番です。ここでは、納期が7日遅れた架空のデータを使います。入力の3区分、下書きを頼む入力文、原資料との一文ずつの照合、提出してよい4つの条件までを順に並べます。
- AIに任せるのは構成の整理と下書き、事実の確定と判断依頼と提出は人が持つ
- 作業前に、使うサービスのデータ保持と学習利用の条件を公式情報で確認
- 入力は、確認済み事実、未確認事項、読み手の判断事項の3つに仕分ける
- 出力は、結論、確認済み事実、影響、未確認事項、判断依頼、次の行動の6見出しに分ける
- 照合は、数値、固有名詞、時系列、未確認事項の4点を原資料と突き合わせる
生成AIで報告書を作る手順は、入力の仕分けと一文ずつの照合で決まる
生成AI(指示を出すと文章や表を作るAI)で報告書を作るときの要は、渡す情報の仕分けと、出てきた下書きの照合です。照合とは、下書きの一文を原資料と突き合わせる作業を指します。原資料は、注文請書、納品書、メールなど、事実のもとになる資料です。
手順は5段階に分かれます。使うサービスのデータの扱いを公式情報で確認し、入力を3つに仕分けます。そのうえでAIへ下書きを頼み、原資料と一文ずつ照らし合わせてから、最後に人が確定して出す流れです。
5段階の順番を飛ばすと、読みやすい文章が先に手元へ来ます。読みやすさは、出せるかどうかの判断材料になりません。出典のない数字や原因の推測が混ざっていても、読んだ感じでは気づきにくいからです。
判断の軸に置きたいのは、下書きの出来ではなく、一文ごとに出典を言えるかどうかです。出典が言えない一文は、消すか、未確認事項へ移すかの2択でよいと考えています。
AIに任せるのは構成と下書き、人が持つのは事実の確定と判断依頼
担当分けは、報告書の部品ごとに決めると迷いません。文章の組み立てと言い回しはAI、事実と判断は人、という分け方です。
- AIに任せる:入力した情報を6つの見出しへ振り分ける
- AIに任せる:下書きの文章化と、指定した字数への短縮
- 人が持つ:事実の確定。出典または確認者を1件ずつ添える
- 人が持つ:影響の解釈。基準との差が、どの工程と数字に及んだかを書く
- 人が持つ:判断依頼の決定。誰に、いつまでに、何を決めてもらうかを決める
- 人が持つ:照合と提出。自分の名前で出す文書として、最後に読み返す
文章と事実で担当を分ける理由は単純です。AIは、入力していない原資料を見られません。だから、入力にない断定が出てきたら、その一文は誰も確かめていない文として扱います。
提出も人の担当です。報告書は自分の名前で出るので、どの一文がどの資料から来たかを説明できる状態にしてから出します。
作業前に、データの扱いを公式情報で確認して合成データで試す
先に確かめるのは、入力した文章やファイルがどこにどれだけ残るかという条件です。学習に使われるかどうかも、同じ場所で確かめます。条件は、サービスやプラン、設定によって変わります。使う予定のサービスの公式ページを、作業前に開いてください。
OpenAIのサービスなら、チャットとファイルの保持を説明したページが公式の案内です。組織向けの扱いは、データの取り扱いをまとめたページで確かめます。ほかのサービスでも、同じ内容を提供元の公式情報で確かめます。外部サービスへ入れてよい情報の範囲を社内で決めているなら、そちらの確認が先です。
条件を読んだあとも、最初から客先名や金額を入れる必要はありません。型を確かめる段階では、合成データで試すほうが早く進みます。合成データとは、説明のために作った架空の値のことです。入力文の作りと出力の並びが固まってから、本物の情報へ差し替えます。
入力は、確認済み事実・未確認事項・読み手の判断事項の3つに分ける
入力メモは、A確認済み事実、B未確認事項、C読み手の判断事項の3区分で作ります。区分を増やさないのは、どの情報をどう扱ってほしいかを行の形で伝えるためです。
- A 確認済み事実:出典となる資料名か、確認者の名前が言える情報。日付、数量、金額はここへ書く
- B 未確認事項:まだ裏が取れていない情報。照会した日と、回答の予定日を末尾に添える
- C 読み手の判断事項:読み手に決めてほしいこと。担当と期限を末尾に添える
影響の欄は作りません。影響は新しい事実ではなく、Aの事実のうち後の工程や数字に及んだものを書き写す欄です。だから入力ではAへ入れておき、出力で分けます。
次の記入例と、このあとの下書き・照合の例は、説明のために作った架空のデータで、実在の会社や取引ではありません。
題材は、B社向けの部品200個の納品が予定より遅れた1件です。表の左は行の名前、右は入力メモへ書く1行にそろえています。
自分の1件に使うときに差し替えるのは、Aの日付、数量、金額、社名などの固有名詞です。BとCは、そのAから決まります。Aの行に出典が書けないものは、Bへ移してください。
11行という数は、この例で数えた件数です。読み手が2件を決められるだけの事実がそろっているかが目安で、決まった行数はありません。

納期遅延の架空データで、下書きを頼む入力文をそろえる
入力文は、出力の見出しと禁止事項を先に書くと短く済みます。下の10行をそのままコピーして、後半の=の右側を自分の情報へ差し替えてください。
次の情報だけを使って、社内向けの報告書の下書きを作ってください。
入力にない事実を補わず、推測が必要な部分は【未確認事項】へ入れてください。
見出しは【結論】【確認済み事実】【影響】【未確認事項】【判断依頼】【次の行動】の6つに分けてください。
【結論】は3文以内で、今の状態と決めてほしいことを先に書いてください。
各行の末尾にある出典、確認者、照会状況、担当、期限は、そのまま残してください。
[報告先と決めてほしいこと]=
[確認済み事実]=
[未確認事項]=
[判断事項]=
[全体の分量]=600字以内
差し替えるのは、6行目から10行目の=の右側だけです。6行目には読み手の役職と決めてほしいことを書きます。7行目から9行目には、入力メモのA、B、Cの行を貼り付けます。10行目に入れた600字以内は例の目安で、決まりではありません。
使う条件は3つあります。機密や個人名を外部サービスへ入れてよいかを社内で確かめていること。データの扱いを公式情報で読んでいること。返ってきた文章を下書きとしてだけ扱うこと。
この入力文で返ってきた下書きを、人が直したあとの完成形が次の表です。左が見出し、右が中身で、中身はすべて架空の値です。
A、B、Cの11行が、6つの見出しへどう移ったかを確かめてください。A1からA3は確認済み事実の1行目、A4は2行目、A7は3行目に入ります。A5とA6は影響へ、B1とB2は未確認事項へ、C1とC2は判断依頼へ移ります。残った次の行動は、B1の回答予定とC2の期限から作った欄です。

AIの下書きは、数値・固有名詞・時系列・未確認事項を一文ずつ照らし合わせる
照合は、下書きの一文ごとに、どの原資料で確かめたかを書き残す作業です。見る場所は4つあります。
- 数値:予定納期、実績、遅延日数、金額を、原資料の値から数え直す
- 固有名詞:社名、部署名、品名、担当者名を、原資料の表記へそろえる
- 時系列:出来事の順番と日付の前後が、原資料と合っているかを見る
- 未確認事項:入力メモのBにあった項目が、断定文に変わっていないかを見る
記録の欄は3列で足ります。左に下書きの一文、中央に照らした原資料、右に結果です。結果は、一致、書き直し、削除の3つに分けます。削除は、入力にない事実が書かれていた場合の扱いです。
下の表は、照合欄の記入例です。左の列に下書きの一文をそのまま写し、右の列に結果を書きます。
この記入例では、6行のうち一致が1行、書き直しが4行、削除が1行です。件数はこの例の内訳で、毎回この割合になるという意味ではありません。
4行目のような一文が、いちばん見落ちやすい形です。文章としてつながっていて、原因まで書かれているため、読み流すと事実に見えます。入力メモのBに載せた項目名を手元に置いて、断定文になっていないかを突き合わせてください。
照合が終わった状態は、下書きのすべての文が3列のどこかに現れている形です。左の列に写していない一文が残っていたら、それは誰も確かめていない文です。

提出してよい報告書は、4つの条件で確かめる
完成の目安は、読み手の動きで決めます。見るのは、冒頭の分かりやすさ、出どころ、担当と期限、未確認の扱いの4点です。
- 冒頭の【結論】2文で、7日遅れの納品完了と、判断2件の期限が分かる
- 数値と事実の行に出典または確認者が残っている(遅延7日は注文請書と納品書、180万円は経理担当)
- 判断依頼の2件に担当と期限がある(営業部長/9月30日(水)17時、購買課長/10月2日(金)12時)
- 未確認の2件が【未確認事項】の中だけに置かれている
4つのうち1つでも欠けていたら、直す場所が決まります。1つ目が欠けるなら【結論】、2つ目なら入力メモのA、3つ目ならCです。4つ目は、照合の4行目と同じ扱いになります。
報告書は、読み手が決めたあとにも使われる文書です。決定、担当、期限を残す形は議事録と重なるので、後で読まれる議事録の書き方も同じ作りで使えます。
うまくいかないときの、4つの戻し方
下書きが思った形にならないときの外れ方は、4つです。戻る場所も、それぞれ違います。
- 時系列の日記になったとき:9月14日から順に並んだ文のうち、結論と判断依頼を先頭へ移す。日付の並びは【確認済み事実】へ畳み、入力文の4行目の3文以内という指定を残したか見る
- 数字だけが並んだとき:基準との差と、及んだ先を足す。9月25日という実績だけなら、予定の9月18日との差7日、検査の9月28日への変更、請求180万円の期ずれを書く
- 原因の推測が事実欄に入ったとき:その一文を削り、【未確認事項】へ照会日と回答予定を付けて移す。入力文の2行目を貼り直してから、もう一度出す
- 報告が長くなったとき:判断依頼の2件に関係しない経緯を別紙へ移す。本文はA・B・Cの11行と6見出しだけに戻す。入力文の10行目の600字以内を、さらに短い字数へ書き換えて出し直す
4つに共通するのは、直す場所が下書きではなく入力側にあることです。出てきた文章を手で直すだけだと、次に同じ入力を渡したときに同じ形が返ってきます。
生成AIへ渡す範囲を業務全体で決め直したいときは、定型事務を生成AIに任せる仕組み化の記事が続きです。
合成データ1件で、入力文と照合欄を試す
生成AIで報告書を作る手順は、入力の仕分けと一文ずつの照合で決まります。文章の出来は、AIに任せて構いません。
今日できるのは、手元の1件を架空の値へ置き換えて、入力メモのA、B、Cを埋めるところまでです。日付、数量、金額、社名を作り物にすれば、データの扱いを読み終える前でも型を試せます。
埋めたら、入力文を1回投げ、返ってきた下書きを3列の照合欄へ写してください。左の列が埋まりきったとき、その報告書は出せる状態に近づいています。
架空の値から本物の情報へ移るのは、外部サービスへ入れてよい情報の範囲と、データの扱いを確かめてからです。確かめたら、A・B・Cの11行を本物の情報へ書き直し、同じ入力文で出し直して、照合欄をもう一度埋めます。型が一度できれば、次に手を動かす場所は文章づくりではなく照合です。
Q&A
Q1. 客先名や金額を外部サービスへ入れてよいか、社内でまだ決まっていません。先に進められますか。
合成データのまま進められます。Aの日付、数量、金額、社名を架空の値へ置き換えれば、入力文10行と3列の照合欄の形は今日作れます。社内の判断が出たら、Aの行を本物の情報へ置き換え、そこから決まるBとCも書き直してください。確認の依頼先が分からないときは、外部サービスへ入れてよい情報の範囲を決めている部署へ、対象のサービス名と入力する項目名を添えて聞くと話が早く進みます。
Q2. 照合していくと、下書きをそのまま使える行がほとんど残りません。AIに頼む意味はありますか。
残るのは、6つの見出しへの振り分けと、文のつなぎと、長さの調整です。A・B・Cの11行がどの見出しへ入るかが決まった状態で戻ってくるなら、その時点で手は進んでいます。一致する行を増やしたいときは、下書きの言い回しを探るより、Aの行を原資料の表記どおりに書き写しておくほうが確実です。
Q3. 読み手に決めてほしいことが思いつきません。Cの欄は空でもよいですか。
Cが空なら、その文書は報告書ではなく記録です。記録として出すなら、6見出しのうち【判断依頼】と【次の行動】を外し、保管場所と検索用の件名を決めるほうが役に立ちます。提出は必要なのにCが空のままなら、読み手が次に動く場面を1つだけ書き出してください。その場面に必要な情報が、Cの下書きになります。


